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PARK SHOP&GALLERY というお店を、いろいろなひとたちの力を借りて、東京は江戸川区の平井という街ではじめたのが2015年の1月。ボロボロのガレージの天井と壁を剥がして、白いペンキを塗り始めたのは、いちょうの葉っぱが黄色くなりはじめたあたりだからちょうど去年のいまごろ。この、江戸川区の平井という街には来たことなかったけれど、なんだか街自体がとても寛容的で、というより『大衆的』といえる、こどもの頃にテレビの中で見たドラマのワンシーンのようで、下町という言葉以前に、ただただ居心地がよかった。
真っ白に塗られたそのボロボロのガレージ、ぼくらは「ギャラリー」と名付けて、絵を飾りました。そうしたらたくさんの作家が、少し遠くから徐々に集まるようになって。でも、「ぼく、平井に住んでるんです」という作家は福田とおるがはじめて。挙動不審で、自信なさげに「絵を描いてます」という。自分のことを「福田」という。へんなやつ。いつのまにか、あたりまえのようにそこにいて、あたりまえのようにみんなと仲良くなって、「福田」は「とおる」で、どうやらアイドルが好きらしいけれど、アイドルの話はすこし長くなりそうだから、今回はやめておきます。
PHOTO&TEXT:JUNYA KATO(PARK INC.)
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加藤 とおるくんって何者なの?
とおる え?(笑) もうはじまってるんですか?
加藤 はじまってるよ。
とおる フーーーーッ!
加藤 肩書きでいうと?
とおる 普段は会社に勤めてるんですけれど、その名刺にはデザイナーって書いてありますね。雑誌のレイアウトをしてます。でもなんか、自分が思い描くデザイナー像とは違う気がして、自分で言うのには抵抗があって、あまり言わないですね。PARK だとまわりのみんなに『イラストレーター』って紹介してもらえることがあるんですが、でも実際に自分がイラストレーターだとは思ってないから、言えないですね。イラストレーターですって言えるどころまで行ってないなあと。
加藤 イラストレーターとしての名刺持ってなかったっけ?
とおる はい。でも、イラストレーターとは書いてないですね。『福田とおる』って書いてあります。書けないですね…。きっと自信がないんですよね。デザイナーもイラストレーターも。
加藤 デザインはどのくらい続けてるの?
とおる 5年ですね。
加藤 5年で自信がないんだ(笑)
とおる だいたい自信がないんですよ。なにをやるにも。人と話すこととかもそうですけど、「いま言ったことで嫌われたんじゃないか」とか、思っちゃうんですよね。考えすぎちゃうというか。
加藤 自信が欠落してるんだね。
とおる 多分そうですね。だから頑張りたいんですよね。続けたいって思う。
加藤 イラストレーターを職業にしたいっていう想いはあるんだよね? それともアーティストとして作品をつくっていたい?
とおる うーん…職業としてのイラストレーターというか、商業用というか、頼まれたから描きましたっていうような、使い捨てられるイラストレーターにはなりたくないっていうのはありますね。自分の世界観はもっていたいです。その方がたのしいし、やりがいがあるなあとは思います。もちろん好きな絵を描いてそれが仕事になったら嬉しいですけど、絵を買ってもらえるとかってあまり考えたことがなくて、見てもらえたらいいなあとか、描け続けられればいいやってずっと思ってたんですよね。趣味というか、仕事のストレス発散で描いたりしていたので。でも、最近 PARK を通じていろいろなイラストレーターさんと会って話すようになって、見せるだけが表現じゃあないんだなあと。『飾る』とか、そういうのも意識して描くようになりましたね。考えて描くようになったらまた違った楽しみが見つかって。
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加藤 そもそもなんで描くようになったの?
とおる 始めたとかって意識がないくらい小さい頃から描いてましたね。家中に絵を描いて怒られたりとか。幼稚園の頃から、絵を描く人になりたいなあとは思ってましたね。高校は美術の専門の学校を選びましたし。
加藤 きっかけは?
とおる 幼稚園でクレヨンが与えられてたんですけど、それで絵を描くのがすごく楽しくて、ずっーと描いてはひとに見せたりの繰り返しで。あと、誰かのために描きたいって気持ちがあって、見せて喜んでもらえるのが嬉しかったんですよね。それと、「上手だね」って言われることが多くて、自分は上手なんだなって思うようになって。それが嬉しくてずっと描いてました。
加藤 でもたいていクラスに何人かは絵がうまいひとがいてさ、みんなそれぞれ上手だけど進路としては選ばなかったりするじゃない。親や先生に「絵描きなんて目指すな」とかさ、言われそうなもんじゃない。そういうのはなかったの?
とおる 絵で食べていくのは無理なんだろうなってのは思ってたんですよ。なので、高校卒業してすぐにデザイン事務所に就職したんですよね。でも、就職したから絵を描かなくなるっていうのがなんとなく嫌で、仕事が終わったら絵を描いて、それをブログにアップするようになって。それがひとに絵を見せるようになったきっかけですかね。誰かに見てもらうためにも、自分が続けるためにも描くようにしたっていう感じです。いずれはイラストレーターになれたらいいなあと思って、いままで働いてました。
加藤 絵のタッチってどうだったの? ずっとこんな感じ?
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とおる 絵のタッチですか(笑) そうですね。小中学校の時は、普通にみんなと同じような絵を描いてたんですけど、高校生くらいからですかね。いまみたいに太いペンで描くようになって。色えんぴつを使うようになったのは就職してからですかね。いい色鉛筆を買えるようになったので。それまでは線を描いたらパソコンに取り込んで色をつけてました。
加藤 そっか。23歳とかだと学生の時からもう授業でパソコン使うんだ。
とおる そうですよ!(笑)みんなパソコンで絵描いてましたよ。でも、パソコンってなんでも描けんじゃんって思って、ちょっとムカついて(笑) 自分はあえてアナログで描こうと思いましたね。
加藤 そうなってくると基礎のデッサン力とかも必要になってくるじゃん。
とおる あの…ぼく…描けちゃうんですよね。超うまいんですよ。先生が授業の見本として前に貼り出したりしてました。これ、高2の時に描いた自画像です。
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加藤 いまのタッチと真逆じゃん(笑)
とおる デッサンは好きだったってのはありますけど、授業としてみんなに負けたくない、認められたい、完璧にしたいっていう一心で描いて上達していっただけなので、もともとタッチはこどもの頃からおんなじですよ。でも、いろいろ、イメージしたものがイメージ通りに描けちゃうから、どれが自分の絵なんだっていうジレンマはありましたね。
加藤 今はどの辺を自分の作品って意識してるの?
とおる 色ですかね。カラフルな。いろいろ描いてきたけれど、描いてて楽しいなあと思えるのが自分の絵かなって思うので、今がいちばんたのしいですね。
加藤 見たことある景色を表現しているの? それとも心理描写?
とおる そうですね。妄想が多いかもしれませんね。でも実際の『人間(ひと)』を見て、そこから妄想するんです。例えばあの子すごく悲しそうな顔してるなあ…から妄想したりするんですよね。考えちゃう。一度、個展…というのは自信がないので、福田とおるの作品展というのをやったことがあるんですけど。その時に出した作品も、1つの絵に対して物語が広すぎてひとつひとつ説明していたら「本書いたら?」って言われるくらい。それで、絵本と漫画を作って PARK に持ってったんですよね。
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加藤 その妄想はどこからくるんだろうね。こどもの頃の転校の経験とかかな? 転校多かったんだよね?
とおる ああ、そうかもしれないですね。小2の時に福島から江戸川区の学校に転校になって、5年で同じ江戸川の平井の小学校に転校したんですけど、毎回辛かったですね。みんなと一緒に卒業できないんだって思って。転校するたびに自分を変えてきた気がします。なんか、ずっと行く先々で『変な子』扱いされてきたんですよね。それが、嫌で。今となっては褒め言葉ですけどね(笑) それが嫌で、最後はずっとおとなしくしようって思って、本を読んでいたり。全然しゃべらないし恐い人だって思われてたかもしれないです。でも、ちゃんとアンテナは張ってるし、学校でしゃべらないだけで、仲のいい友達とはしゃべるし。そのギャップがいい経験になった感じはあります。妄想につながったというか。
加藤 そっかそっか、みんなに負けたくない!って思ってデッサンがうまくなってくとか、みんなと同じようにパソコンで絵を描きたくないとかも、転校の経験からきてるかもしれないね。
とおる それはありますね。絵でもなんでも、みんなと一緒は嫌だなって思うようになりましたね。あとは大学に行かないで就職したっていうのが大きくて…。美大に行った友達はみんなキラキラしてたんですよね。それが辛くて…。社会人3年目くらいの時にはみんな「展示やりまーす」「来てねー」とか言ってて。「は?」って。悔しくて。でも、どっかで大学に行きたかった自分がいて。でも、大学に行くお金があったわけではないし。「卒展たいへんだー」とか言ってるけど、こっちは毎日働いてるなあって。
加藤 それは辛い。
とおる そのおかげもあって頑張らなきゃなあと思ってます。仕事しながらだけど個展もやろうと思ったし、いろいろやりたいって思いましたね。負けたくない。でもひとつだけ、就職してよかったなって思えることがあって。
加藤 いい色鉛筆を買えるようになったとか?(笑)
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とおる いや、みんな絵を描くの辞めちゃうんですよね。大学卒業して就職すると。違う世界に行ったみたいに、表現やめちゃったんですよね。それだけならまだしも、頑張って会社に入ったのにすぐにやめちゃったりとか。みんなわざわざ大学行ってそんななの? って。そこは、自分で自分を褒めたいですね。福田は頑張ったと思います。お金もたまったし、やりたいことやれてます。
加藤 みんなにはできないことをやれてるんだよね。
とおる そうですね。で、なにやろうかなって思ってた頃に急に近所に PARK が平井に現れて。福田が行かなくてもいろんな作家さんが地元に来てくれるようになって。最高ですよね。あれ? なんだこれ? って。なんだこのお店って。
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加藤 嬉しいね。店番もやらされてるっていう(笑)これからどうしていきたいとかあるの?
とおる うーん。おじいちゃんになっても変わらずに絵を描いていたいですね。いまのタッチで、いまのまま。あと、昭和のアイドルが好きなんですけれど、これが福田の絵にすごく影響していて(アイドル好きになっていった変遷は長いので割愛。聞きたい人はとおるくんに聞いてください)
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とおる 昭和のテレビって、みんながアイドルに夢中だったというか、みんながその感動を共有してたっていうか、見たくないけど見ちゃってるってのもあったと思うし、大衆というか、とっつきにくさっていうのがないんですよね。で、みんなが経験しちゃってるんですよね。そういう絵を描きたいんですよね。福田とおるを知らなくても、みんなが好きになれる。そういうのに憧れてますね。温泉みたいな存在になりたいですね。あたりまえにみんな好きじゃないですか、温泉。
加藤 いいね。いいよ。
とおる え!(笑)
加藤 いや、なんかいいよ。ふわふわしてるのに、鋭いというか。で、絵も上手いんだよね(笑)
とおる 超うまいですね。
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福田とおる
1992年山形生まれ。2011年都立工芸高校デザイン科卒業。現在、デザイン事務所に勤務しつつ、カラフルで愉快だけどちょっとセンチな絵を描いている。
2015年11月、東京都江戸川区平井PARK SHOP&GALLERYにて、個展「窓にシーズン」http://fukudatoru.jimdo.com
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