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micann(みかん)っていうバンド名を聞いて、ぼくが思ったのは「未完」って言葉。完成していない。というより、完了していないというようなニュアンスが、ジューシーなまでの『若さ』と、オレンジ色のギターポップサウンドに乗っかってある日、頭の中を彩る。

 

特別おいしいわけはじゃあないし、好き嫌いもそんなに分かれないし、なんだかずっと食べていられるし、でも絶対に満たされないというか、食べても食べても「これがベスト」とは思えない。でも、今年もまた、飽きもせずに爪と指の隙間ををだいだい色に染めながら、みかんの皮をほじって、うっかりその1年でいちばん『いい景色』をぼうっと見ていたりする。でも、仮に、そんなささやかで感動的な、二律背反な日常に溢れるジューシーな1コマが、ぼくらにとって必要な栄養素たっぷりのフルーツのポップスだとしたら、キウイやパパイヤ、マンゴーみたいに派手じゃなくてもいいから、それをずっと摂取したいと思ったりもする。

 

まるで『未完』というタイトルのついたポップスの交響曲のごとく。檜垣『清丸』のダクトは今日も振られる。そもそも清丸って名前が、柳のように刀を振るう侍のようで、いいよね。すごくニュートラル。

 

PHOTO&TEXT:JUNYA KATO(PARK INC.)

 

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加藤 micann。みかん。ミカン。いい名前だよね。バンド。

 

清丸 ありがとうございます。

 

加藤 もうどのくらいやってるの?

 

清丸 5年ですね。いま24歳なので、19歳の頃にはじめたんですけど、いまのメンバーは男3人、女1人っていう編成なんですけど、男3人は高校からずっと一緒で。バンドはずっとやってました。micann としては大学あたりから。

 

加藤 同級生で続けてるのっていいよね。羨ましい。

 

清丸 で、バンドはじめて3ヶ月くらいで、サマソニ(SUMMER SONIC)っていう夏フェスの新人でも出演のチャンスがもらえるオーディションに応募してみたんですよね。一次審査が投票で、3000組から150組か200組くらいに絞られるんですけど、そこはするすると通ってしまい(笑) 二次審査は実際に審査員の前でライブをやるか、もう審査員じきじきでオファーがくるかのどちらかなんですけど、ぼくらはライブをやることになり、二次審査を受けて、それで選んでもらって出たって感じですね。

 

加藤 まさにオーディションだ。

 

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清丸 今の micann はわりとポップな印象だと思うんですけど、当時はもうすこしハードな感じで…。大学生だし若かったってこともあって、歌詞もぜんぜん今とは違くて。

 

加藤 どんな感じだったの?

 

清丸 思想的な感じですね。学生運動が盛んだった時代の思想の本とか読みまくって影響されてました。

 

加藤 俺たちはこのままでいいのか!!!!みたいな(笑)

 

清丸 まさにそれ、言ってたと思います。

 

加藤 めんどくせー(笑)

 

清丸 そうですよね。いま思えばほんと恥ずかしいっすね。思想の本って言ってもいま思えば「入門書」くらいの感じでしたし、いろんなことがイヤで、嫌いで、あげ足ばかり取ってましたね。あげあし取るくらいの知識しかなかったというか。あげあし取って投げっぱなし。ただのやっかいな存在ですよね(笑)

 

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加藤 もともと大学通いながらも音楽はやりたいって思ってたの?

 

清丸 そうですね。大学も近かったんで、コンビニに行く感覚で授業出たり、授業に出ずに喫茶店で本読んでずっともんもんとしてたり。

 

加藤 昭和の文学青年か(笑)

 

清丸 文学青年に失礼なほど本も読んでないし不真面目でしたけどね…。

 

加藤 音楽をやりはじめたきっかけは?

 

清丸 もともと小学校からずっとバスケをやってて。中学の時はバスケばっかりやってたんですよね。でも音楽の授業もすごい好きで。CD聞くのも普通に好きで、オリコンに入ってるような曲はぜんぶ聞いていたし。でも、中学でいろんな音楽雑誌を読むようになってからは、オリコンに入ってない曲とかにもハマりだして。で、ちょうどそのタイミングでなぜかたまたま父がギターをもらってきたんですよね。そのあたりからちょうどバスケをやる気もなくなってきてて。

 

加藤 あ、バスケやめちゃうんだ(笑)

 

清丸 うちの学校、すごく弱かったんですよね。小学生の時は隣町までわざわざ行って、強いチームで練習してたんですけど、中学になったとたん弱すぎて…いつのまにかバスケ辞めちゃいましたね。バスケ以外に何をやろうかなって考えたら、家にギターが。で、ベースの長村は中学から一緒だったんですけど、同じタイミングで雑誌を読みはじめて音楽にハマってたから、バンドやろうぜって感じで。それで、結局おんなじ高校に行って一緒にバンドを。最初はアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)のコピーバンドって感じで。

 

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加藤 世代かんじるなー。でも、バンドはじめてすぐにサマソニ出るんでしょ? 「売れるかも!」って思わなかったの?

 

清丸 思えなかったですね。オリジナルの曲もろくにないのに、売れるとか、思ったことなかったですね。いま同じ状況だったら、あのチャンスをもっと活かせたかと思うんですけど。ほんとなんとなく、何かが起こる気がする…くらいの。

 

加藤 起こった?

 

清丸 なにも起こらなかったですね。

 

加藤 なにも起こらなかった(笑)

 

清丸 で、なにも特に起こらないまま大学の卒業の時期になるんですけど、自然とまわりは就職の話になってきて。がんばってメジャーに行って音楽で食べていくっていう選択肢もあったかもしれないんですけど、あまり現実感もないし、フリーターでもいいかなって思いつつも、フリーターで毎日のように働かなくちゃいけないなら就職でもいいのか、って思ったり。一回働いてみるのもいいかな? くらいの感じで。

 

加藤 若き思想家とは思えない判断だね! でも、いまっぽいというか、冷静な判断。

 

清丸 その頃にはもう思想キャラじゃなくなってましたね(笑) 最初の半年くらいでパワーなくなってきちゃって。「性に合わないんだな」って。尖っててもしょうがないっていうか。俺がやることじゃあないなって。まわりにいるバリバリ思想全開のパンクバンドとかアウトローなバンドとか見てて、「好きだけど自分には似合わない」って、早めに気づけたっていうか。どっちつかずって言われることもあったけど、どっちかにつかなくたっていいじゃん!ってあげあし取ったりもしながら、すごく葛藤しましたね。どっちかにつかなくてはいけないって、どうせ「もし売れたいんだったらこう」っていう売れるためのレールに乗せようとしてるだけの考え方だし、そういうのイヤだったんですよね。正解なんてないし。じゃあ、いっそ就職しようって(笑)

 

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加藤 そのあたりから、いまみたいに仕事をしながら、空いた時間で曲を作って、っていう感じになるんだね。

 

清丸 そうですね。どっちかっていうとバイタリティはある方なんで。

 

加藤 自分で言うの(笑)

 

清丸 micann の活動って結局「好きなことをやってる」から、いくらでもできるんですよね。仕事終わって疲れてるとかあんまり関係ない。だから micann のデザインも自分でやりたいし、バンドの企画もまず自分で考えて、一回みんなに提案して、反応を見て、意見を聞いて、納得いくまで作っていくっていうことをやってきました。

 

加藤 好きなことは納得したいもんね。でも、好き勝手やってメンバーに嫌がられたりしないの?

 

清丸 「ぜんぜんやりたくない」って言われる時はありますよ(笑) でも、ほかのメンバーはみんな僕とちがって真面目なんすよね。まともというか。みんなちゃんとしてる。普通に音楽なしで仕事してても生きていけるくらい。だから、意見もちゃんと言ってくれるんですよね。一般の感覚があるというか。でも、そのバランスがいいなって思ったのはほんと最近で。それまでは、俺ばっかりじゃなくて、みんなも曲作ってよ!とか、アイデア出してよ!とか、ちょっと責めたりしてた時があったんですけど、そうじゃないなって。だいたいそういう時って、自分のアイデアが出ない時の八つ当たりだったりして。それじゃあうまくいかないなって。そこに気づいてから、楽になりましたね。

 

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加藤 この前、バンドじゃなくてソロライブを見させてもらったけど、それもよかったね。

 

清丸 ありがとうございます。ソロは本当はやる気はなかったんですけど、バンドメンバー全員が就職活動しはじめて、なかなかバンドでライブができなかった時期があって、ぼくもそうでしたけど、生活の環境が変わっちゃうと、うまくリズムが取れなくて。でも、バンドの活動が止まってるって思われるのイヤだなって。それで、たまたま、とういうかよくある話かもしれないんですけど、ライブハウスからmicannの出演の誘いがあって、でもバンドじゃ出れないから、ソロでどうですか?って言ってもらえれて。

 

加藤 バイタリティある方だしね。

 

清丸 そうですね。バイタリティはある方なんで(笑)

 

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加藤 ソロってバンドみたいに歌えるものなの?

 

清丸 いや…。自分の作った曲だし、構成は一緒なんでなんとかなるかなって思ったんですけど、最初はすごく悩んみましたね。バンドの場合ってお客さん側って4人のうちの誰を見てもいいし、バンドを見てるって感じだけど、ソロって僕しか見られてないから、見てる人が「いまなにを考えてるんだろう」って思うようになって、不安になったり。でもよかったって言われるとすごく嬉しくて、いろいろ勉強になりましたね。でも、やっぱりバンドが支えてくれてる部分って大きいなって思いつつ、で、やってるうちに少しずつ歌えるようになってきて。ソロで歌うようになってからバンドに戻って歌ってみたら、なんか歌いやすくなってきたんですよね。歌に戻ったというか。

 

加藤 歌うまいもんなあ。

 

清丸 いや、自分ではそうは思わないんですけどね。好きですけど。歌うの。自分の中で「決まったな!」って思うことはあるんですけど、なかなか自分の魅力がわからず…。うまいとか言われることがあっても、あまり自分に期待をしないようにしてるというか。…ステージ上だけにしかないミラクルってのがあると思っていて。

 

加藤 ほう。

 

清丸 そのミラクルって、期待すると起こらないんですよね。音楽だけじゃないかもしれないですけど。だから、ステージに立った瞬間に諦めるようにしたんですよね。自分の才能とか、ミラクルとか。となると、今までの練習とか、反復してきたこととかが、その場で現れるだけになるというか。練習が足らなかったら、それしか出ないし、練習すれば、いいライブができるから、反応もいい。そう考えると逆に、練習以上のことが起こらなかった時も、焦る必要はないというか。なんか、諦めてるんですよね。でも、そのおかげで、ミスがなくなったというか、変な力が入らなくなったというか、常にその時のマックスの状態でライブができるように。

 

加藤 ある時期に関しては、諦めるって大事だよね。自分を知る・理解するからこそ進めるってことがある。で、今後もどんどん諦めてくの?(笑)

 

清丸 いや、別にすすんで諦めたいわけじゃあないんですよね(笑)まわりのひとたちに支えられてるうちにそうなったというか。だから、いまは自分の持てる力の最大限は出せてるつもりでいるので、あとは少しでも多くのひとに micann って音楽を知ってもらえたらなって。見せ方もそうですし。なによりも、フィジカルにいろんなひとに会いに行きたいです。音楽のシーンだけじゃなく、できるだけいろんなひとに会って、自分たちを広げていきたいなって。そのために、デザインもこだわっていきたいし、最近どんどん知り合っていくいろいろなジャンルのアーティストのみんなともたくさんコラボしたいし、だから、なんていうんだろう…いまが一番たのしいですね。

 

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檜垣 清丸 / micann

 

micann 主宰 / 弾き語りソロ / その他演奏や制作などなど / 平日会社員

 

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