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ずっと続いている。ということが、ときどきすごく良いこととされるけれども、ただ続いていればいいのかと言われると、ぼくはそれに対して魅力は感じない。
しかし、同じようなニュアンスでも「変わらない」という関係値があって、ぼくはそれは信用している。いまのthai kick murphというバンドの魅力の1つに、「変わらない」という状態から育まれた強さがある。もちろんメンバーチェンジや、就職、結婚など、ひとりひとりの環境の変化はあるのだけれど、この、しなやかなまでの「変わらない」「強さ」はどこからくるのか。
たとえばthai kick murphを脱退したワジマケイが残した爪痕なのか。ボーカルのミヤオヨウの圧倒的な歌唱力なのか。それともギターを務める内山の執着心か。(過去のNEUTRALを参照してほしい)
関 恵都美 の ニュートラル。
thai kick murphのベースを担当する彼女と、はじめてちゃんと向かい合って話してみて、彼女の中に変わらない「強さ」を証明するような「芯」を見た気がした。
PHOTO&TEXT:JUNYA KATO(PARK INC.)
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加藤 えっちゃんって、まったく謎のベールに包まれてる印象だけど、普段は何してるの?
関 普通にOLやってますね。月曜日から金曜日まで。休みは暦どおりですし、この前も夏休みだったんですけど、久しぶりの連休なんで沖縄に遊びに行ってはしゃいで…つまり典型的なOLです(笑)
加藤 まさかバンドでベース弾いてるなんて思わないよね。見た目のイメージにもないし。会社のひとたちは知ってるの?
関 知ってますね。飲み会で「休みの日はなにしてるの?」とか「趣味は?」とかって質問が出て来たりするんで、「バンドやってます…」と。でも決まって「なんの曲コピーしてるの?」って聞かれますね。コピーバンドだって思われることが多いです。あと「何系?」って聞かれるのがいちばん困りますね。
加藤 たしかにね。thai kick murph 何系か説明するの難しい…。
関 「ポップです」って答えてます(笑)
加藤 ポップね。たしかにポップ。そもそもバンド名の説明がむずかしそうだよね。
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関 そうですね。
加藤 じゃあ平日はしっかり朝から晩まで働いて、バンド活動は週末にって感じだ。
関 そうですね。本当は平日もやらないといけないなって思うんですけどなかなか…。
加藤 バンドと仕事の両立はね、どんなバンドでも打ち当たる壁というかね。でも就職の時に選択に迫られたんじゃない? バンドをやるか、就職をするか。
関 うーん。その当時はバンドで食えるほど世の中は甘くないって思ってましたね。ヨウちゃんみたいに曲を作れて唄えれば、将来的な可能性があっていいのかもしれなけれど、自分はベースしか弾けないし、だからと言って技術もないし、だんだん幅も広がらない感じもあって、限界を感じていたというか、自信もなかったし、決心がつかなかったですね。ただ、バンドをやめるっていう選択肢はなかったです。考えもしなかったですね。どちらかと言うと、ヨウちゃんとバンドを続けたい気持ちの方が強かったですね。ずっと高校から一緒にやってきたし、仕事をしながら頑張ってるバンドもまわりにたくさんいたし。週末がんばればいいのかなって。
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加藤 そうだ、ヨウちゃんとは高校から一緒にバンドやってるんだもんね(NEUTRAL #030 参照) なんか相当ギャルだったらしいじゃん。
関 そういう歴史もありましたね(笑)
加藤 女の子でベースっていうのも、ただでさえ珍しい時代だったと思うけれど、見た目ギャルでベース(笑) 楽器は最初からベースだったの?
関 実はバンド自体は中学からやっていて。なんとなく、小学生の時にピアノをやってて、高学年くらいになると3つ上の兄がギターを買って来て。家に『バンドをやろうぜ』(雑誌)が置いてあったりして。なんか楽しそうだなっていうのは漠然と思ってて。お兄ちゃんのギター借りて練習したり、誰かとやろうとまでは思わなかったですけど。で、中学では運動が苦手だったんで吹奏楽部に入ってフルートをやりたいなって思って。ドラマで流行っててたんですよね。ミーハーな感じですけど(笑) でも2人しかフルートになれないのに10人くらい応募があって…まぁまぁ吹けるつもりでいたんですけど、結局、打楽器に…。
加藤 打楽器(笑)
関 私は金管でも木管でもいいから吹く楽器がやりたかったのに!
加藤 女の子の憧れとしてはそうだよね…。
関 でも、打楽器だとドラムもやらせてもらえるんですよ。それがすごくおもしろくて。中2くらいからですかね。で、まわりでバンドやるのが流行って来てて。いちばん仲のいい友達を誘って、だれが何をやるってわけでもなく、初心者5人で集まって。私はドラムが叩けるから、ほかのパートをみんなで決めましょうって感じだったんですけど、結局、ひとりの男の子は、よくある感じでギターで、で、もうひとりがなぜかドラムやりたいって言い出して(笑) しょうがないなぁと思ってるうちになぜかベースに…。
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加藤 そもそもベースは弾けたの?
関 たまたまお兄ちゃんが友達からベースとドラムをもらってきて、家にあったんで、初心者ではあったんですけど、練習はできたんですよね。
加藤 というかお兄ちゃんすごいな(笑)
関 ハイスタ(HI-STANDARD)とかがちょうど流行り出して、兄もバンドやりはじめて。
加藤 高校の時、文化祭でいっぱいいたもん。ハイスタ系のバンドコピーしてるヤツら(笑)
関 私たちもブラフマンとかコピーしてましたね。いま聞いたらひどい演奏だと思いますけど(笑) そのバンドは文化祭を目標にしてそれで終わりって感じで。で、高校に行ったら軽音楽部でヨウちゃんに出会って、一緒にバンドを組むんですけど、その部活内で同年代で組むならこれしかいないっていう人数だったんで、ヨウちゃんは歌が唄えてギターができる、もうひとりはギターしかできないっていうんでもうひとりギター、で、もうひとりが「ドラムしかできません」って子で…。
加藤 じゃあ…
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関 必然的にベースですよね。もうベース以外の楽器をやるっていうのを人生的にもあきらめましたね。
加藤 ベースに導かれてる(笑)
関 そうですね…。
加藤 本当は何の楽器がやりたかったの?
関 ドラムですね。ドラムを叩くためにサークルに入ったんで。なので、妥協の人生です。でも、ベースがイヤだったってわけじゃあなかったんですけどね。味あるし、だんだんかっこいいなって思えるようになりましたけど。
加藤 いずれにしてもリズム隊なんだね…で、見た目はギャルなんだよね(笑)そのギャップがすごく気になる。
関 その話、恥ずかしいですね…まぁ長野の田舎だったんで、友達に合わせてると自然とそうなっちゃうんですよね…。金髪で蛍光の黄色のピチピチのTシャツでした(笑)
加藤 高校卒業してからは大学? それともバンドやるために上京?
関 いや、それは全然なかったですね。普通に進学です。姉も兄も大学だったんで、大学行くのは当たり前、くらいの感じで。しかも、ふたりとも指定校推薦で受験せずに大学に行ってたんで、私も推薦で大学に行かないとって思って。
加藤 推薦ってことは勉強もできないとだよね?
関 そうですね。でも、受験勉強は絶対にイヤだって思ってたんで、入学してすぐくらいから、1回1回のテストをちゃんとやろうと思って。あとでまとめて3年間の復習するよりは、3ヶ月に1回くらいのテストを一瞬がんばればいいだけだって思ってやってましたね。みんなが推薦枠に気づく前に点数を取っておこうと思って、みんなが受験勉強してる時にバイトしてました(笑)
加藤 したたかというか現実主義というか(笑)
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関 で、ヨウちゃんがおんなじ大学に行くって決まって、それでふたりで音楽サークルを探して。
加藤 バンドサークルに入ってそのまま thai kick murphを結成という感じ?
関 いや…どこのサークルに見に行ってもなかなかいいところがなくて…。高校の時みたいに機材があって練習できるところにしようって思って探したんですけど、大きくて有名なところは有名なだけあって初心者が多いし、どこ行っても「GLAYとL'Arc~en~Cielどっちをコピーする?」みたいな話ばかりで…。で、結局、部室がちゃんとしてるって理由で『アメリカ民謡研究会』ってところに…。
加藤 アメリカ民謡研究会(笑)
関 そこでギターのウッチー(NEUTRAL #029 参照)に会うんですけどね(笑) そこから音源を作ってライブハウスに送ったりして、下北沢とか、都内のライブハウスでライブをやらせてもらえるようになって。
加藤 だんだん活動していくうちに、売れたいとかは思わなかったの? わりと近くで見てると人気もあって調子いい感じに見えたけれど。
関 そこまではイメージできてなかったですね。学生の勢いかなっていうのもあったし、卒業前によくも悪くもいろいろ動いてくれてたワジマ(NEUTRAL #020 参照)が脱退して、それでも頑張ろうって思って新曲作って、TOWER RECORDでリコメンドされたりして、いろいろやってたのはやってたんですけど、人任せにしすぎて自分たちでチャンスを台無しにしてしまったり、なかなかカタチにならなくて…。やっと新しいアルバムが出せるっていうタイミングでドラムが抜けたり…。私も仕事もするようになって週末しか動けないし、せっかくヨウちゃんがいろいろなライブハウスにチラシ配ってくれたりして、動いてくれてるのに、なかなか前に進まず…。
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加藤 今後はどうしていきたいとかあるの?
関 そうですね。せっかく録音した新曲があるので、それをまずはちゃんとリリースしたいなと。それで最近、積極的にみんなで集まって話したりするようになって。いままで他人任せにしてばかりいたけど、自分たちでもちゃんと動こうと。どうしてもヨウちゃんに任せきりになってしまいますけど。
加藤 まぁでもそういうところはフォローしあってもいいんじゃないかなって思うよ。
関 あとは、最初はただ単純にバンドが好きで、かっこいいなって思ってたくさん音楽聞いて好奇心ではじめたバンドでしたけど、高校でオリジナルで曲を作るようになって、まだだれも聞いたことない、世の中に出てないものをみんなで作って、演奏するってことが楽しいなって思って、いろいろ学んで。でも、みんながみんな、売れてるバンドもそうですけど、オリジナルで演奏してる中で、だれの曲でもいいかって言うとそうじゃなくて…、高校、大学とずっとそうでしたけど、やっぱりヨウちゃんの曲が純粋に好きなんだなって。何曲も何十曲と聞いてきましたけど。全部好きで。で、ヨウちゃんの曲が世の中に出て行った時に、それを演奏するのは私でありたいなっていう。ただのファンみたいで気持ち悪いですよね(笑)
加藤 いやいや、その関係性はステキだと思うよ。
関 だから、仕事が忙しいとかもありますし、技術に限界を感じたりはするんですけど、ヨウちゃんが続ける限り、やめたくはないですね。人任せってわけではないんですけど。あとは純粋に音楽をやるのが楽しいので続けたいですね。バンドがあるから一週間の仕事が頑張れるし。
加藤 安定した仕事があるからバンドを頑張れるとも言えるよね。
関 それもあるかもしれないですね(笑)
加藤 でも、売れたらどうするの? 仕事。
関 それは…売れてきたら考えます!
加藤 現実主義〜(笑)
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関 恵都美 / ETSUMI SEKI
thai kick murph ベーシスト
thai kick murph WEB SITE
http://www.thaikickmurph.com
thai kick murph PV「アイランド
http://youtube.com/watch?v=-zObCMw8NTg
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