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日曜日の朝。こうしてパソコンに向かって原稿を書いていると、窓の外、どこかの家のテレビからは軽はずみなBGMと笑い声が聞こえる。電車が鉄の線路を軋ませる。鳥がさえずる。雲がうねる。自転車。犬の鳴き声。音にならない音。振り返れば、なんてことはない、ただ散らかった部屋が日常を閉じ込めて、転がっている。
見てごらん。きみの背後に広がるその世界を。
その世界では、いつだってきみのまわりに誰かがいて、彼らは結局、口をそろえてこう言うんだ。
「すべてのことに意味なんてない」と。
ー Velvet Underground 「Sunday Morning」
街のはずれの雑木林。ろうそくに火を灯し、ゆっくりと、これからのことを話しながら朝を待つ。暑くもない寒くもない季節。誰かはギターを奏でて、誰かはマグカップにホットワインを注ぐ。話しても話しても答えは出ないけれど、ひとりひとり、確かになにかに気づいている。そんな時間と、映画のワンシーンみたいな作戦会議を、ぼくらはここ最近、繰り返している。
「街」という単位でぼくらは何ができるのか。そして、ぼくらの活動に、どんな「意味」があるのか。
PHOTO&TEXT:JUNYA KATO(PARK INC.)
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加藤 峯松くんって普段はなにしてるの? なんかいつも森の中とか畑にいるイメージあるけど。
峯松 それよく言われるんですよね、なんでだろう(笑) 自分でもあまりわかってないんですけど『地域活動家』っていうのがしっくり来た時もあったし『特定非営利活動個人』がいいんじゃない? ってひとに言われたことも。
加藤 NPOならぬNPP(Personal)
峯松 たしかに助成金をあずかって何かをやったり、趣味みたいな瞬間もあるし、それもいいなぁって思ったんですけど、利益の出ない活動をしたいわけではないので、なので地域活動家かなぁ。
加藤 NPOって給料になりにくい印象があるけど、生業は?
峯松 すごくローカルな話になってしまうんですけど、武蔵村山市の市民会館で働いてます。個人で地域の活動もしながら、もう少し大きな規模の文化事業を通じて地域の魅力を広めたいし、地域のひとが主役になれる場を作りたいと思って。
加藤 あれ? そのあたりが地元だっけ?
峯松 いや、生まれ育ったのは神奈川県の川崎の住宅地ですね。隣に住んでるひとのこともよくわからないような。そんな都会の感じがイヤで、大学生のあたりからもっと単純に社会を知りたいなって思うようになって、卒業してから大分に1年、岩手県に2年、中山間地域のいわゆる限界集落と呼ばれる村ですね。そういう場所に住んでひとと接したりして、それがなんか面白いなって。
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加加藤 なにかきっかけはあったの?
峯松 もともと大学で社会学を勉強してて、でもそれももっと辿っていくとわりと小さい頃から新聞を読むのが好きで、社会には興味あったんですけど、読んでるとわりとネガティブな情報ばかり載ってるんですよね。日本のダメなところとか悪いところとか。じゃあ本当にそれがそういうものなのか、見てみたくなって。
加藤 実際どうだった?
峯松 人口が1000人もいなくて、10年後どうなってるかわからないような小さな村だったんですけど、でも実際そこに住んでる人たちはすごく生き生きしてて、みんな助け合って仲良く生きてるんですよね。ぼくみたいなよそ者にもすごく寛容で。すごく楽しい1年でしたね。そのままそこに根付きたいなって思ったんですけど、なんせ仕事がないのと、もっとほかのところも見てみたいって思うようになって、今度は岩手に。
加藤 岩手はなんで?
峯松 震災がきっかけですね。ちょうど大分でのくらしを終えた頃に震災があって、これは東北に行かないといけない。なにかしら自分にできることがあればしないといけないって想いがわいて。で、岩手の葛巻町ってところに自然エネルギーを使ってこどもたちと遊んだり、ワークショップをやってる廃校を改造したNPO施設があって、そこに就職して住み込みで働かせてもらって。
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加藤 すごい行動力だなぁ。
峯松 いやいやなんもできなかったですけどね。とりあえず行ってみた。だからあんまりうまくいかないなって。でも、たくさん経験させてもらいましたね。畑をやりながら、にわとりを育てながら、こどもとキャンプしたり。でも、限界を感じたってわけじゃあないんですけど、農家や林業家にはなれないなぁと。なんだかんだ言ってわりと都会的なものとかカルチャーがやっぱり好きだなって思ったことがあって、切り離せなかったんですよね。だからその経験を活かしながら、今度は自分がそういう拠点を作ってやるぞくらいの気持ちでやりたいなって思って。で、東京に戻って来たっていうのはあるんですけど。
加藤 いいね。20代で地域のひととのコミュニケーションとか、自然の魅力に気づけなかったなぁ。どちらかといえば、できるだけひとに出会わずに、話さずに生きてたかった…。
峯松 自分も根っこでは教室の隅でずっとひとりで音楽を聞いてた感じとか、引きずってはいますね(笑)
加藤 話聞いてると、ルー・リード(The Velvet Underground)が好きだったり、70年代のマイノリティなロックが好きだったり、社会に興味を持ち始めたのも、けっこう音楽がきっかけだったりするんじゃない?
峯松 そうですね。もちろんロックも好きですけどヒップホップも好きですよ。
加藤 意外(笑)
峯松 こんななりですけどね、*Jurassic5とか、大好きですよ。なんかまったく相容れないものをごちゃまぜになってる感じとか、楽しんだもの勝ち、盛り上げてなんぼ、みたいな開かれた感じがすごい好きで。
*Jurassic5…LAで結成された6人組ヒップホップグループ。メジャーシーンにいながらも、宗教観や社会性の強い表現で他と一線を画す。
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加藤 すごい踊れるのに、言ってることはすごく社会的でシリアスとかね。
峯松 ミックスする楽しさがすごい好きなんですよね。そういう感覚を自分の人生に取り入れられたらなって。もっとヒップホップ的な活動をやりたいんですよ。
加藤 ヒップホップ的な生き方(笑)
峯松 出会ったヤツは全員ブラザーみたいな(笑)
加藤 楽器を買うお金がないから、壁を叩くぜ的な。
峯松 そうそう、その感覚です。
加藤 地域活動=ヒップホップ。もともとヒップホップもストリートから生まれてるもんね。黒人の奴隷解放がルーツだったりね。ゴスペルとか。声が楽器。唄ってつながる。
峯松 そう! 本当にそう思いますよ。そこで暮らすひととひとがつながって、音楽を通じてマッシュアップされてく感じとか、自分のスタンスというか位置を考える音楽というか。もともとはみだしもの感覚というか、集団行動が苦手だったりっていうのは自分の中にあったんで。共感できますね。
加藤 ぼくも集団行動はずっと苦手だったなぁ…。いや、いまでも嫌い。
峯松 でも団体を作りたがる(笑)
加藤 ひとが集まることはやりたくなっちゃう。
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峯松 そうそう。だからまぁ理想としてはたくさんひとが寄り集まってるけど、ルールとかの枠にハマらず、アイデアや知恵を出し合って、やっていくっていうのがいいかなって思います。
加藤 わかる。自然と協力し合えるのがいいよね。ルールがあるってつまり、ルールで裁くひとが現れて、上下関係ができてさ、ルールを守るためのルールを作るひとがでてきてさ、そもそもルールがなくてもうまくいったことがうまくいかなくなったり、守った守ってないで対立したりさ。そもそもなんでダメなんだっけ? みたいな…くだらないよね。
峯松 きっとこれからもたちはだかる問題だし、なかなか難しいジレンマですよね。昔から音楽でも映画でも自分がいいと思ったものを団体に受け入れてもらったことがあまりなくて(笑) でも、個人個人でそういうひとに出会えるとすごく嬉しいし、すぐ仲良くなれる。
加藤 自分がいいと思ってるものをいいって思いたいけど、なかなか言いづらい。なぜか。だからどんどんひとと距離を置くようになってくし満足できないというか。
峯松 そうなんですよね。すでにあるもので満足するわけにもいかないし。自分はこんなにルーリードが好きで、世界中でこんなに人気なのに、なんでまわりにルーリードが好きなひとが少ないんだって。
加藤 そうそう。近くにいない。逆にEXILやAKB48好きなひとたちがたくさんいるらしいけど、会わないし、どこにいんの!って(笑)
峯松 そうそう。
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峯松 ただ与えられるだけの消費者のひとりとして生きてくこともできるし、ネットもあるんだから自分で選んでいくこともできるって時に、なんか物足りないんだよなぁと。じゃあその状況に満足できないひとたちで集まって、環境を自分たちで作るしかない。だからと言ってEXILEを好きなひとを否定するつもりはなくて、そこで本人が幸せならそれでいいし、そのバランスは、考えてますね。
加藤 だって買うようにできてるんだもん。あんなに広告打たれて、テレビで流れて、次の日の話題に乗れなかったらいじめられるんでしょう?
峯松 資本主義(笑)
加藤 でもなぜ東京でも続けてNPOを?
峯松 東京に戻って来て、たまたま面白そうなことやってるなって思った活動を運営していたのが小平市のNPOで、それで興味を持ったんですよね。で、その団体から今度みんなで集まるから来なよとか、手伝ってくんない? とか言てもらえるようになって、就職活動をしないといけなかったのに、友達づくりというか、ひととひとが知り合うっていうことばっかりやってて、もうどんどん貯金も底を尽き…でもやっぱりこの道なんだ…というか。震災以降、くらしを考え直したいなってちょうど思ってたんで。まぁまぁ、それも道かなって(笑)
加藤 今後はこの道だ、と。
峯松 ですね。わりとやりたいことはやらせてもらってるし、毎日楽しいなって思ってます。けど、その代わり『地域』っていう規模のコミュニティって必ず理不尽なことにぶちあたるんで大変…理屈じゃない人間関係のしがらみとか、その地域独自のルールとかリズムに巻き込まれて、良くしようと思って集まってくれてる新参者がたちうちできない…。
加藤 わかる…。
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峯松 ぼくはそれを『ローカル理不尽』って呼んでます。
加藤 「こうあるべきだ」「昔からそうだ」だよね。でもいい流れがくると都合のいいこと言うし、悪い状況になると悪く言う。あれ、地方行政がバックで面倒くさがってんのかな。だとしたらまさにローカル理不尽(笑)
峯松 そうですね。でも地域活動と言っても、「民間VS政府」「民間VS行政」とか、敵を作るような対立はくだらないって思ってて、そんなんやるくらいなら、みんなお互い折半して、助け合って、折衷案でもいいから案を出し合って、仲良く1つの街を作っていった方がぜったいに楽しいだろうなって。それが自分が住んでる街だけじゃなくて、どこに住んでても、どの街でも、そんな環境でも楽しくできる、楽しい毎日が送れるようになったら最高だなって。だからいまはそのためのノウハウを、何年かけてもいいから腰をすえて活動を通じて学んでる感じですね。それができるようになったら東京だろうと地方だろうと関係なくて、どこにでも行ってやろうって思ってますけどね。あとは「生き残りたい」っていう気持ちがどこかにあって、都会で生きるのに漠然と不安を抱えていて…これって続かない構造なんじゃないかなって、震災前から感じてて。農家になりたいわけじゃあないのに農業をやったりしてるのって実はそうで、食べるものくらい作って生きていけるようになりたいって思うし。すくなくとも同じ世界にずっといないで、そういう体験をしてみるっていうのが良いのかな〜と。
加藤 まずは行動だよね。
峯松 庭の野菜、全然そだってくれないですけどね(笑)
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峯松崇平 / SOUHEI MINEMATSU
1987年神奈川県川崎市生まれ。大学卒業後、フリーターを経て2010年「緑のふるさと協力隊」として大分県日田市中津江村に滞在。2011年から2年間、岩手県葛巻町「森と風のがっこう」職員。2013年より上京し、東京西部にて地域づくり活動遂行中。お茶の間セッションのメンバーでもある。
http://www.ochanomasession.com
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