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美味いもんが運ばれてくる。テーブルを囲むぼくらの歓喜の声があがる。彼はひとりしずかに微笑みながら両手を伸ばし、我が子を愛でるかのようにその顔(皿)に手を添え、「よくぞ来た」とつぶやく(かのよう)。しっかりと美味いもんの『顔』を捉え、おもむろに
カメラ(iPhone)を構える。まるで拝むように、
カシャ! カシャ! カシャ!
KaZ語録「カシャつく」
テーブルに運ばれてきた美味いもんを撮影すること。
美味いもんを食べる時には、DJ KaZ がカシャついた後に食べるのがこの世界のルール。
DJ KaZ。左耳に『難聴』というハンデキャップを抱えるDJ。元プログラマー。WEBサイト・アプリのディレクター。町田の老舗洋食店『グリルママ』の長男。
いや、肩書きなんて必要ない。
街があって、そこにひとがいて、乾杯をして、みんなで美味いもんを食って、笑い合う。やさしく、時に助け合って、進んで行く。そんなシンプルな「旅」のような毎日が続けば、それだけでいいとさえ思える。そんな風に思わせてくれる
PHOTO&TEXT:JUNYA KATO(PARK INC.)
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加藤 15時から行列のもつ焼き屋。また1つ、名店を見つけてしまいましたね。
KaZ こんなことならさっきのラーメン屋で麺少なめにしてとか言えばよかった。くそ…腹減りたいわ…。
KaZ 語録 「腹減りたい」
お腹いっぱいなのに目の前に美味いもんがある時や、近所に美味しそうなお店がある時の切実な思い。贅沢な悩み。
加藤 そもそも、なぜこんなにメシに執着するようになったの?
KaZ もう長いことメシにハマってるけど、メシだけじゃなく、いろんな周期でいろんなことにハマってきたんだよね。DJはじめて、レコードにハマって、がっつりヒップホップの勉強して、次にハマったのは『芋焼酎』かなぁ。もしかしたらレコードと同じくらいハマってたかもね。片っ端から呑んで、誰も知らないうまいの探そうって思って。レコードとおんなじ感覚。で、次がラーメン。友達と一緒に、その日のコース作って、車出して、その街でラーメン屋ハシゴしてって、3杯目は無理だから映画館はさんで(笑) とか…でもラーメンだけかも。狂ったペースで今でも食い続けてるのは…。
加藤 ほぼ毎日でしょう?
KaZ ここ4、5年は。最初はラーメンに限らずいろんな麺類を攻めてたんだけど、ラーメンは特に果てしないからね…。
加藤 つけめんは?
KaZ 美味しくないとは言わないけどさ、スタンスがあんまり好きじゃない。ぬるくなってくじゃん。メシって普通、熱いか冷たいかのどっちかじゃん。刺身は冷たいし、ラーメンは熱い。どう考えてもぬるい食べ物のって、世の中的にはマズいわけ、それを認めるのか? と。慌てて『あつもりあります』とか言ってるけどさ、冷水で〆てないだけだから、麺が最高の状態じゃあないわけでしょ。焼き石とか全席IHとか言ってる暇あったら美味いラーメン作ってくれよって。ラーメンは茹で加減、スープの温度、麺をあげるタイミング、客に出すタイミングで逆算して完璧な状態を目指す職人技なわけよ。そうじゃなきゃただのB級グルメ。そもそもぬるいものなんて料理として成立しない。
加藤 厳しい〜(笑)
KaZ 基本的に、こっちは死ぬまでに、ひとくちたりともマズいものを食いたくないってスタンスで暮らしてますから。
加藤 音楽もそうかもね。
KaZ そう。1つも外したくないし、1つでも多くいいものを知ってたいんだよね。みんなが知らない曲をかけて、仲間にも、お客さんにも喜んでもらいたいのと一緒。
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加藤 DJをはじめたきっかけは?
KaZ 中学3年くらいからかな? カッコつけて本格的に洋楽を聴き始めて。わけもわからずとにかくいろんなのを聴いてたんだけど、カッコいいと思う曲にヒップホップが多いなって。で、アナログにし入ってないヤバいバージョンとかリミックスもあるから、CDだけ聴いてたんじゃあダメだなって。で、レコード買おうって。どうせレコードプレーヤー買うならDJやろうと。
加藤 で、少年院から出てDJデビューって流れか。
KaZ 塀の中で流れてたラジオ聴いてはじめた的な?
加藤 曲のタイトルを爪で壁に刻んで…外に出たらまずはそのレコードを買いに行くぞ的な。
KaZ いやぁ〜高校2年の時かなんかに六本木のクラブで回したのが最初かなぁ。友達のイベントに誘われて。そこからいろいろ出るようになって。
加藤 急に真面目な話(笑)
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KaZ 中にはさ、しょっぱいイベントとかもあって、一晩におんなじ曲ばっかかかってるような。で、イベント自体のコンセプトはいいのに、残念だなって思って、その頃まだイケイケだったからさ、主催者に直接「こんなショボいことやってんなら俺を出せ!」って。で、次の時にはもうメインDJで呼ばれたり(笑) あとは、まだ SNSが普及してない時にさ、ネットを使って全国からDJや客を呼ぶ試みを何回かやってみたことがあってさ。その時に、関東のひとはもちろん日本中からひとが集まってくれた時があって。ヒッピホップが好きなひとたちが集まる当時のBBS(掲示板)とか使って、それで。
加藤 当時からWEBは強かったんだね。
KaZ そうだね。その頃からもう自分のホームページ作ってミックスをあげたり、好きなレコードのレビュー書いたりしてて、そのサイトに集まってくるひとたちが喜んでくれて、イベント遊びに来てくれたりコミュニケーションとったりっていう。いまのSNSの走りだよね。メシもレコードもさ、サービス精神ってのが根底にあるのかも。まぁだいたいのDJがそうだろうけど、自分は聴かないけど、ひとが聴いたら喜ぶだろうなとか、この流れでこれかけたらアガるだろうなとかっていうのでレコードを選んだりする時があるし、メシもさ「あそこにいい店あるよ」ってすぐにアテンド出来た方がみんな気持ちいいだろうし、俺もマズいの食わなくて済む(笑)
加藤 なるほど。もはやコンシェルジュ(笑)
KaZ ひとって死ぬまでに食える量が決まってるからさ。カウントダウンははじまってるわけ。だから、あの店がうまかったからってずっと同じ店に通ってる場合じゃない。もっと知りたいわけよね、いい店を。
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加藤 家が老舗の洋食店ってのもあるのかな。おいしいもの食べさせて喜んでもらうみたいな。お店はいつから続いてるって言ったっけ?
KaZ 1957年創業。昭和32年だね。親父が2代目で、弟が3代目。
加藤 青山組の3代目、継がなかったんだ(笑)
KaZ 弟が料理の勉強しはじめたから、そこはね。俺は高校卒業してからも遊びたかったから大学には勝手に行くつもりでいて、で、俺、ウソつきたくないからさ、その時だけマジメな顔して「勉強したい」って言いたくなくて。正直に言ったんだよね「遊びに行かせてくれ!」って。
加藤 みんなも行くしね。
KaZ そう! みんなも行くぜ! 俺も行くぜ! いいぜ!ってなると思ったら、超キレられて。絶対に大学行かせねーみたいになって。
加藤 まさかの(笑) まぁでも勉強してなかったんじゃあしょうがないよね。
KaZ いや、でも、自分で言うのもなんだけど、中学入るくらいまでは結構優秀だったの。勉強も出来たし、学級委員長とかやってたくらい。でも、悪い先輩とかに出会っちゃって、サッカーはサボるわ、塾サボるわで。いま思えば、親にもめちゃくちゃ迷惑かけたなぁ…と。底辺みたいな高校に入った時点で泣いてたもんね。
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加藤 高校は? 普通科?
KaZ 普通科だったけど超ハードコアな男子校。廊下でみんなストリートファイトやってた(笑)
加藤 じゃあそのハードコア高校出てすぐに就職だ。
KaZ そうだね。大学行く気まんまんだったからさ。マジでこいつら大学行かせてくれねえ!って思った瞬間にマジでやべえと思ってさ。近所のディスカウントストアとか、もうどこでもよくて、町田からラクに行けるようなところ全部受けたんだけど、全部落ちて。で、担任の先生がたまたま理系で…俺も当時ゲームにハマってたってのもあったりで、その先生の勧めでプログラムの会社に就職して、そこでイチからプログラムの勉強をしながら働いて。最初はほぼ自習だよね。プログラムの本をドンと積まれて、「これ全部やって」みたいな感じで。で、だんだんプログラム書くとかもイヤになって、何社か転職してるうちにディレクター的な立場に。
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加藤 経歴だけ聞いてるととてもじゃないけど、友達にならなそうな感じだよね。でも、やっぱ、一緒に旅したりするようになってからかな。急激に仲良くなったのわ。
KaZ そうだね。とにかくインドア派だったからさ。自分の部屋が最強だと思ってたし。手の届くところに好きなレコードがあって、映画があって、ゲームがあって、大画面のテレビがあって、DJブースもあって音響ばっちりで。そしたらもうココっしょ! 誰も勝てないっしょ! って。でもそこだけじゃないんだって気づくのにだいぶかかった(笑) その部屋を超える『バチッ』とくるもんがあるとは思ってなかったからね。行くたびに新しい出会いがあってさ、それがさ、なんて言うんだろう…何事にも代えがたい。
加藤 何事にも代えがたい(笑)
KaZ いや、ひとなんだよね。やっぱ。結局。地元のひとに会いに行って、地元のメシを食って…。だから、ひとしか見てないよ俺は。コンテンツ作るって言ったって、ひとだよ。何かを通じてひとに会いたくて全部やってんだよ。
加藤 似合わねー(笑)
KaZ まぁ…でも実はどっちかって言うとひとぎらいで。全員まずは「嫌い」から入るんだけど。そこから話を聞いてみるわけ。加藤のことも最初すげー嫌いだったし(笑) でも、掴まれちゃうとヤバいよね。この前、10人くらいで群馬に行ったときも、はじめましてのひとも多かったんだけど、みんなグッと来ちゃったんだよね。一瞬で掴まれた。そういうのってあるじゃん。なんかひとりで熱くなっちゃって…。向こうも好きで、こっちも好きで、その時に生まれるものってデけーじゃん。だから、ひととひとをつないで、またその先のひとを喜ばせるってことをこの先はしていきたいなって思ったよね。
加藤 やっぱその気持ちは刑務所にいる頃に芽生えたのかな。
KaZ 独房で看守にやさしくされてね。
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公園についてのモノやコト
加藤 公園も良かったけど、この前みんなで行った「畑」、よかったね。
KaZ そうだね。やっぱ帰って来てからいろんなひとに言われるよ。「畑でなにしてたんすか?」って。で、いろいろあったけど良かったよって話すけどさ、俺ってどっからどう見ても「自然顔」じゃあないから笑われるけど。虫とかすげー嫌いだし。あん時もさ、虫が嫌だから畑の上にゴザしいたのにさ、ゴザの上にすげー虫がいるわけ。そこには座らないよね(笑)
加藤 その顔で虫が嫌いとか(笑)
KaZ ドがつくほどインドア派だからさ。
加藤 じゃあそんなインドア派にとっての公園のイメージは?
KaZ 公園も虫、いるよね。虫がいるところはとにかくすげーイヤなんだけど(笑)
加藤 公園感ゼロだしね。
KaZ まぁ公園の観点から言うとさ、なんだかんだ言ってホームというか、家族の場所だったりするわけじゃん。小さい時に親に連れて行かれて、大きくなったら子供を連れてって親として遊ばせる場所というか。原点であり、戻ってくる場所っていう。そういう意味合い絶対にあるっしょ。だからさ、虫は置いておいてもさ、畑でも公園でも、そこに集まったみんながいいヤツだとさ、なんかやっぱグッとくる。また行こうって思う。
加藤 そういえば畑に突如現れたこどもたちにすげー人気だったね。
KaZ こどもは好きなんだよ。でも、中学の時から『顔面凶器』って言われ続けてきたからさ、俺から近づくことは基本的には許されないのよ(笑) でも、こどもとか畑とか公園なんて縁がなかったからさ、これを機に、こういう活動は続けていきたいって思ったよね。いいものになればいいって思う。畑のプロジェクトも、手伝えることがあったらなんでも手伝うよ。
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青山 和樹 / KaZUKI AOYAMA
DJ / フードエクスプローラー
1980年、町田の老舗洋食店『グリルママ』の息子として東京都町田市に生まれる。
90年代のブラックミュージックに魅せられ17歳からDJ活動をはじめる。
現在ではフードエクスプローラーとして、旅を通じて、全国各地の最高の料理を探求する活動を行っている。
ラーメンflickr
https://www.flickr.com/photos/djkazu/sets/72157622573939656/
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