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東日本大震災から3年とちょっと。2014年、東京。
ソーシャル(社会的)に『つながる』、オンラインのコミュニケーションアプリを立ち上げ、そこに『復興』『被災地』『原発』という言葉でも見ない限り、ぼくらは、3年前に日本の東側で起こった悲劇を、思い出せない。
3月11日の夜。いつもよりゆっくりと濃い闇が降った。専門学校時代の同級生の、宍戸が、宮城に住んでいる。その安否を確認する術はなく。何もできないぼくは、闇の中でバランスを失った(まだ失ったままかもしれない)。その後、『無事だ』と聞いた時、安心したと同時に、ぼくはたまたま運が良く『死んでいない』だけであって、『生きなきゃ』と思った。ぼくは会社をやめて、どこでもいつでも誰かのために立っていられるための術を考えた。よりたくさんのひとに会いに行く仕事を率先して選んで、とにかく働くことにした。
2014年。宍戸からある1通の手紙が届く。どうやら彼の母親と姉が『霧鹿香草店(ムジカハーブス)』というハーブのブランドを立ち上げ、いまは、それを手伝ってるのだという。「力を貸してくれないか」と彼に言われ、すぐに仙台に向かった。あの時、「力を貸してくれないか」と言われても、飛んで行けなかったと思う。
PHOTO&TEXT:JUNYA KATO(PARK INC.)
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加藤 で、どうなの、最近。
宍戸 え、最近? え? みんなこんなゆるい感じでやってんの?
加藤 そうだよ。
宍戸 すげーな(笑)
加藤 で、最近は主に何やってるの?
宍戸 ベースは映像だね。TVCM作ったり、地元の89ers(バスケットチーム)とか東北楽天イーグルスの試合で流れる映像を作ったり。企画から演出、コンテンツ制作もやるし、場合によっては編集もやる。映像を流す『現場』に行って、映像を送出するオペレーターをやることもあるね。地方って東京とちがって映像に対するバジェット(予算)が全然なくてさ、でも見てるひとからすれば予算の都合なんてぜんぜん関係ないじゃん。楽しめればいいわけであって。だから、自分ができることはなんでもいいから力になれればって感じで。
加藤 ディレクターとかプロデューサーとかってわけではなく?
宍戸 映像屋って感じ。それでずっとやってきたし、その世界しか知らないからね。あとは、ハーブのインストラクターを育てるNPO法人のジャパンハーブソサエティーっていう全国的な組織があって、母親がそこの『理事』をやってたことがあったから、家業としてハーブ関係の仕事をしてて、手伝ってる。まだ勉強しながらって感じだけど。スクールをやったり、専門学校でアシスタント講師をしたり、フィトセラピーの研究をしたり、育てたりもしてる。
加藤 フィトセラピー?
宍戸 植物療法だね。ハーブや園芸を通じて、体の免疫力を高めたり、メンタルを癒して行くような療法。
加藤 ハーブかぁ。知ってるような知らないような。
宍戸 言葉を知ってるってひとはたくさんいるんだけどね。でも、面白いよ。専門学校の19、20歳くらいのコたちに授業で「ハーブって知ってる?」って聞くとさ、昔は『ラベンダー』と『カモミール』くらいがせいぜいなんだけど、いまのコたちは『パクチー』とか『ジャスミン』とか『レモングラス』とか、『バジル』『タイム』『セージ』『オレガノ』『シナモン』…いろいろ知ってるんだよね。それは時代の変化というか。流れてるよね。ここ20年くらいかな。2000年はじめに1回おおきなブームが来てるんだよね。テレビの料理番組や本でもハーブを使った料理が紹介されるようになって。爆発的に売れたんだよね。
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加藤 言われてみると確かにここ最近のような気もするなぁ。
宍戸 言葉は知ってるんだけどね。じゃあ『カモミール』にはなんの効果があるんですか? って聞いてもだいたいのひとがわからない。「香りを嗅いでるとなんとなく落ち着く」とか。でも、本当は「落ち着く」っていうのはその人の中の『何か』が足りなくて、それが補われてるってことだから、実はそれを自覚して、ハーブをうまく取り入れられるようになると、リラックスしたい時にリラックスできたり、頑張りたい時に元気になれたりする。そういう効果をスクールで教えてるんだけどね、もっとそういうことを知る機会が増えるといいなって。どうやったら増やせるかわからないから、それを模索するのがぼくらの使命かもしれないけどね。生活とハーブのありかたというか。
加藤 おお…すごい興味がわいてきた。けど、ハーブって顔じゃあないよね。
宍戸 それは言われる。すごくよく言われる(笑)
加藤 そもそも映像をはじめた理由は?
宍戸 映画が好きだったんだよね。ぼくらが多感な時期だった頃の映画って良かったんだよね。いい作品がバンバン出てた気がする。
加藤 たしかにね。ぼくもそれで映画監督を目指した時期があった。でもさ、映画が好きで、映像の勉強をしに東京に出て、そしてずっと映像の仕事をやってる。すごいよね。尊敬する。おんなじ専門学校行ってたはずなのに、ぼくはとっくに映像の仕事あきらめてる(笑)
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宍戸 そこに『ハーブ』っていう別のベクトルのものが入ってきて、さらに面白いけどね。
加藤 ハーブはなんで?
宍戸 アメリカで早くにハーブを勉強してた母親の影響で、物心ついた時から自然とハーブが身近にあったんだよね。だからいつの間にか覚えてることがたくさんあって、母親の手伝いをするのに資格を取ってみようと思って勉強はじめたら、自分でも気持ちが悪いくらい知ってて(笑)
加藤 料理のスパイスや肉の臭み消しとしてのハーブはすごく身近だし、ぼくもたまに使うけど、それ以外であまり身近に感じたことないかもな。
宍戸 お茶だね。ハーブティー。あと、アロマ。オイルとかロウソクとかね。家庭菜園するひともいるし、見て楽しむひともいる。みんなが雑草って思ってるものがハーブだったりするんだよね。だから、ハーブって実は強い。中には栽培が難しいハーブもあるけど、わりと簡単に育てられる種類が多い。
加藤 たしかに。家の庭でバジル育てた時に成長しすぎてビビった。穫れたては本当に美味しかったけど。超余ったからね(笑)
宍戸 フレッシュなのは本当に美味しいし香りも良い。でもなかなか使いきれなかったり、もたなかったりするから、ドライにするのが主流だね。乾燥させていろいろな用途に使えるから。
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加藤 魔女って印象があるな。ハーブって。ハーブととかげのしっぽを混ぜて、ねるねるねるね的な。
宍戸 そう。魔女だと思われてたひとがハーブを育ててるおばさんだったって話もあるくらいだからね。、もともと西洋ではハーブを使った薬酒を修道院の僧侶が調合して作ったりしてた。だから、日本ではまだまだ若い文化なんだよね。ヨーロッパだけじゃなくアメリカももうハーブが主流だし、東南アジアはハーブの生産量が多いから自然とハーブが生活に根付いてる。古くはエジプト文明でミイラを作るのにハーブを使ってたくらい。だから、日本は全然遅い。どくだみ、春菊、ニンニク、しょうが、みょうが、ねぎっていう、日本のハーブもたくさんあるから、身近にはあるんだけどね。不思議と普及はしてない。沖縄のレモングラスとかすごいよ。本当にいい香りがする。でも、もっともっと産業としておもしろくなる可能性がたくさんあるし、どうやったら広がって行くかなって考えるのも面白い。仙台から日本中に広げることもできるんじゃないかって思ってる。
加藤 そうだね。いま少し話を聞いただけでもすごく魅力的な気がするし、実際に興味を抱いてる。
宍戸 ハーブの一方でもう1つ映像で関わってる『楽天イーグルス』のここ最近の盛り上がりたるや!ってのもあるわけ。マーくんっていうスター選手がいて、優勝するくらいの勢いがあって、いままで野球にぜんぜん興味がなかった女の子とかも「試合に連れてって」とか言ってるわけ。で、行ってみるといろんな層のお客さんがたくさんいて。別に野球を見てるわけじゃないひともたくさんいる。晴れた日にビール飲みに来てるようなひととか。どんな風にも楽しめるようなムードになってて。バスケも、ちゃんと地域に根付かせるためにプロリーグが出来て、しかも仙台は震災以降に4面センターディスプレイ360°リボンビジョンってのががつけられた『ゼビオアリーナ』っていうすごい恵まれた施設が完成して、89ersの選手が『NBA』でプレイしてるみたいだって喜んでる。震災の前は全国で2位だったチームが、震災後にはチームが一回バラバラになってしまって、ランクもさがって、だからいま、すごい頑張ってる。そんな選手たちが頑張って、残り何秒かで逆転のスリーポイントシュートを決めたりしたら、それを見たこどもたちは感動するわけ、いつかあんな選手になりたいって思うわけ。それで、広がる。それが大事。
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加藤 たしかに。メディアや言葉だけじゃあ伝わらない感動は、大きい。
宍戸 だから映像をやってる。映像で会場を盛り上げて、選手の気持ちを盛り上げて、試合を盛り上げて。…いや、怖いくらい。そこで映像を流すタイミング間違えたらどうしようとか。すごいプレッシャーを感じる。
加藤 もうメンバーだね(笑)
宍戸 まぁね。だからその分、勝利をするって感覚ってすごい。やめられない。がんばれる。だから、すでに普及しているスポーツみたいに『ハーブ』の世界も、もっと実際に現場で体感してもらえれば魅力がもっと伝わるんじゃないかって思ってて。だから気軽に体感してもらいたい。そのために『霧鹿香草店(ムジカハーブス)』から、日本中に美味しいハーブティを届けたいし、仙台だけじゃなく、日本中のハーブの関係者と一緒にハーブを盛り上げていきたい。地域によって、いろんな個性のハーブがある。個性の数だけ可能性を感じるんだよね。可能性があるってことは、まるで映画を作るみたいに、
ちゃんと筋道を考えてあげるだけで、楽しい世の中にできるんじゃないかって思うんだよね。ブームの中じゃあきっとこういう考え方はできなかったと思うんだけどね。ひとつのおおきなブームが去って、震災の影響でスクールの受講者が離ればなれになって、いろんな意味で『さら地』になったからね、これからだよ。道を作って歩いてく感じ。
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公園についてのモノやコト
宍戸 通勤とかさ、とくに目的なく歩いてるとさ、いろんなことを考えるんだよね。邪念というか。その邪念がかたまってくとさ、なんか、だんだんだんだん「いや、これ待てよ」とか、「これ、おもしれーんじゃねーか?」とかさ、スッキリする瞬間があるんだよね。で、公園にいると、ただ座ってぼーっとしてるだけで、それとおんなじ瞬間があって。公園ってさ、遊びの場だったり、お弁当食べたり、社交の場だったり、いろんな楽しみ方があって、いろんな人が集まってくるからさ、素の自分がどういう人間なのかって再確認できる場所でもある。だと、リラックスできる。
加藤 そのわりに怒ってるみたいな顔してるよね。ハーブっぽくない。
宍戸 それは言われる。すごくよく言われる(笑)
加藤 昔からそうだよね(笑)
宍戸 言葉にしてないだけで、すごい楽しいし、すごいリラックスしてるよ(笑) あまり人より言葉にしないだけ。
加藤 これぞまさにフィトセラピー。園芸療法。
宍戸 そう。『公園』の景観を作ったりするのも、フィトセラピーだね。景色ってやっぱり大事なんだよね。
加藤 そうだね。たくさんいい景色があるとそれだけでいいね。それにしても、学生時代の同級生を仙台で撮影する日が来るとは…お互い歳を取ったよなぁ。
宍戸 10年も経てばそりゃ変わるよな(笑)
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宍戸 克郎 / KATSURO SHISHIDO
CM制作プロダクションを経て、独立し仙台へ帰郷。映像の企画・演出から、仙台89ERSや東北楽天ゴールデンイーグルス等のプロスポーツのスタジアム映像まで、幅広く手掛ける。
HERB AND CRAFT、霧鹿香草店の一員として、ハーブの普及くらしとハーブの在り方を研究。ハーブ商品の開発などに関与。
ジャパンハーブソサエティー中級ハーブインストラクター
日本フィトセラピー協会認定フィトセラピーアドバイザー
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