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一瞬、不協和音にも聞こえるアンサンブル。型にハマることのない変拍子。バラバラに崩れ落ちた構成は、いつかしれっと元に戻る。暗く重くのしかかってくるメロディ。しかし時々、美しい光が差し込む。

これは音楽の話じゃなくて、ぼくらのくらしの話。

『俺はこんなもんじゃない』という変わった名前のバンドに出会ったのはもう何年前だろう。8年、いや9年。
最初にこのいびつなオーケストラバンドのライブを見た時の印象は『ジャングルで行われる動物たちの会議』だった。軽快に樹の枝を飛び回るようなサックス、吠えるベース、周囲に警戒し耳を立てるキーボード。
水場ではしゃぐドラム。そんな動物たちの真ん中に、無口な野犬みたいなギタリスト。狩生健志。

5年ぶりに彼らのアルバムがリリースされ、久しぶりに足を運んだ。いつの間にか動物たちは増え、いつしか『NO FANTASY』という議題をかかげ集まる動物会議の舞台は、ぼくらの住む『コンクリートジャングル』へ移動していた。

 

狩生健志のニュートラル。

PHOTO&TEXT:JUNYA KATO(PARK INC.)

 

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加藤 なんて紹介しましょうかね? バンド? それとも仕事?

 

狩生 『俺はこんなもんじゃない』のギターであり、作曲家…うーん、そうか…作曲家なのかな。いや、作曲家っていうと、ベートーベンとかそういうイメージになってしまうよね。

 

加藤 確かに(笑)インタビューとかよく受けます?

 

狩生 そうですね、慣れてないね。うまく表現できるかなって。(録音マイクを見て)あ、でも、こういう風に波形が出てたりするとテンションがあがるね。録られてるというか『Rec』ってボタンが押されると俄然やる気がでる。自分の中の、何もなかったことでも話してしまいそうになるから不思議ですね。

 

加藤 ON / OFF の切り替え。わかります。

 

狩生 うん。1年くらい前からバンドと別にCMやWEBの作曲の仕事をするようになって、家で作業することが多いから、ケジメがつきにくいというか、本当は『Rec』が押されてなくてもちゃんとやらないといけないんだろうけど、なかなか。だからこの『Rec』に対する反応はひとより激しい。『Rec状態』かどうかってのが非常に重要。メガネのグラスの左上に常に『Rec』って出ててほしい。そうしたらいろんなところで力を発揮できるような気がする。

 

加藤 ずっと『俺はこんなもんじゃない』のギターとして接してきたけれど、ここにきて仕事としての音楽を作り始めるようになったきっかけとかあるんですか?

 

狩生 友達に『迷彩』というダンサーがいて、その映像の音楽を作ったんですよ。ダンスの音楽なんて作ったことなかったから見よう見まねで。なんか個性的で変なものができたんですよね。これで踊れんのか? みたいな。でも試しにぶつけてみたらそれがわりと好評だったみたいで、そこから仕事させてもらっていまに至る。

 

加藤 『俺はこんなもんじゃない』の音からは仕事での作曲のイメージができないっすけどね(笑)

 

狩生 そうだよね。たまに仕事で『俺はこんなもんじゃない』の過去のストック曲でなんかないですか? って言われるんですけど、聞いてもらうとわかるけれど、商業BGMとしては難しいよね(笑)

 

加藤 かなりチャレンジですよね。

 

狩生 そうだよね。

 

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加藤 そもそも狩生くんが音楽をはじめるきっかけとかはあったんすか?

 

狩生 インタビュー的には面白くないかもしれないんだけれど、実は「ない」んだよね。自然と、いつのまにやら…。ギターを拾ったりしたんだけど、漠然としてるんだよね。これがやりたいとかではなかった。

 

加藤 いやいや、ギター拾ったってだけで充分おもしろい(笑) …ああ、そういえばなんかギター拾ってはじめたってひと、ほかにもいたな…。

 

狩生 そうなんだよね、実は俺の友達にもギターやベースを拾ってはじめたヤツがいて、だから意外と楽器って捨ててあるものっていうか。「あきらめの象徴」として、『捨てる』んだよね(笑) 高価なわりに捨てやすい。よく捨てられてる。意味を込めて捨てる。でも手放すのもいいことなのかもね。運命というか。捨てて誰かの手に渡って奇しくもそこに魂が宿ってて、その後その人が何年もバンドをやったりするんだから。

 

加藤 で、拾って、弾いてみようって思ったんだ。

 

狩生 でも最初はまったくギターのことわからなくて、比較的簡単な『C』っていうコードがあるんだけど、教則本に載ってる『C』の手のカタチで本当は左手で弦を押さえないといけないんだけど、右手をそのカタチにして弾いてた。左手はなにもやってない(笑)

 

加藤 それヤバい(笑)

 

狩生 高校でやっとバンドを組んで、いろいろわかって。練習したり、録音してみたり。

 

加藤 コピーバンドとか?

 

狩生 いや、コピーをするってのがすごく苦手で…。ずっと実験的にオリジナルで音を鳴らしてた気がする。あ、最初の話に戻っちゃうかもしれないけれど、『Rec』というか、『録音』って作業が昔から好きだったんだよね。録音ってそもそも不思議じゃないですか。音が『録れる』っていう。時間を巻き戻したり、進めたりできるし、あきらかにおかしなことだし、だから『不思議』だっていう点でずっと音楽を聞いていたかも。いまだに録音の仕組み、わかってないしね。

 

加藤 たしかに。それでいうとレコードも。

 

狩生 不思議だよねえ。だってあれってただの『溝』でしょ? 溝にすごい細かな「ひだ」を作って、こするだけで音楽が鳴るんでしょ? ありえないでしょう、そんなの。狂ってる。

 

加藤 狂ってる(笑)

 

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加藤 そもそも『俺はこんなもんじゃない』っていうバンド名がもう不思議ですけどね。

 

狩生 それについては強く言いたいことがあるんだけど、かなりいい加減につけた名前なんで、みんな深刻にとらえないでほしい。ここ、太字にしておいてほしいくらいですね(笑) 俺は、俺はこんなもんじゃないって思ってるわけではなくて、いや、思ってやってる部分ももちろんあるから否定はできないんだけれど、たまたまスタジオでメンバー募集の紙を見てたら紙にマジックで「俺はこんなもんじゃない!」って書かれてるのを見つけて、普段使われてない、日の当たらないダサい言葉だから、俺たちが救ってあげなきゃって思ったんだろうね、そういう年頃だったから。今だったらもうちょっと違う名前をつけたかもしれないな。その頃はひねくれてたから。だから当時も誰も納得いってなかったし、今でも誰も納得いってない。どんな音楽かって聞かれても、8人中、サックスが2人いて、俺はギターで、ボーカルはいなくて、で、バンド名は『俺はこんなもんじゃない』で、余計わけがわかんないわけで…、じゃあ聞かせたところでもっとわかんない(笑) だから名前はね、ミスってるだけだから、大目に見てほしい。

 

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加藤 一回聞いたら忘れないけどね。

 

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狩生 そう。謎は残したよね。よくわからない不思議さ。自分で不思議を生み出して、伝わらないって言って苦しんでる。どうやら『水中それは苦しい』のようなバンドだと思われてる。ツイッターとか見ても『変な名前のバンドシリーズ』でしか紹介されてない。俺だってそんな名前つけて苦しんでるんだからほんと勘弁してほしい。名前でざわつかないでほしい。俺が本当に「俺はこんなもんじゃない」って思い続けてステージに立ってるって思わないでほしい。これ、すごい重要なこと。このインタビューで一番聞いてほしいことかもしれない。いつだって名前は変えられたかもしれない。何か別の、さわやかな名前もつけれた。けど、間違って名前つけてしまったけれど、そのまま頑張ってるひとがいるってことを知ってほしい。

 

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公園についてのモノやコト

 

加藤 新しく出た『NO FANTASY』っていうアルバムがもうすでに謎の公園みたいですよね。異彩を放ってる。今までにくらべて都会的だし、

 

狩生 いままでは自分の想像や理解ができる範囲内でアルバムを作ってきたんだけれど、今回のはそれを超えてる。もう自分たちでもわかってない、不思議なものになってる。ジャケットのデザインをしてくれた寺澤くん(NEUTRAL#003参照)も都会的って言ってくれてた。まさに『NO FANTASY』だと。

 

加藤 今までの『俺はこんなもんじゃない』の曲って、ジャングルとか、異国の短編映画を見てるような感覚とか、あとは無条件に踊れるとか、そういう「音」と「景色」の印象だったんですけど、新しいのはアルバム通じて、なんかもっと自分たちのことを鳴らされてるような。

狩生 うん。いま、時代の混迷感がすごいじゃないですか。このとてつもない時代の混迷に勝つにはもっと頑張って自分たちを混迷させないと『表現』なんてできない。ニュースひとつ見ててもよくわからないことが増えたし、これはこうだってハッキリと言えないことが増えてきた。ちょっと前は違ったよね。だから、もし俺の役割があるとしたら、いまの時代の混迷の原因はこうだって追求したり、わかりやすい結論を出すことではなく、混迷をそのまま同じくらいの混迷で現すっていうのが自分の役割な気がする。いや、誰もそんな作業求めてないかもしれないけれど。

 

加藤 いやいや(笑) でもこの前ライブも見させてもらって、なぜか妙に気分がマッチしたんですよね。納得した。時代を音で現すなら、いま、ここだなって。なんでなんだろう。不思議。

 

狩生 ひっそりと時代を捉えちゃったんじゃないですかね(笑) でも作品を作って良かった。こうやって久しぶりに加藤くんに会えたり、面白い感想が聞けたりするから。これからもやめる理由も見つからないし、作り続けて行こうと思います。

 

狩生 健志 (作曲家・俺はこんなもんじゃない)
8人編成の大所帯バンド「俺はこんなもんじゃない」でギターを担当。その他、Paul Smith、クライスラー、ダイワハウス、ベネッセにおけるCMやWEB音楽制作や、イベントやインスタレーションの作曲家としても活動。
https://sites.google.com/site/owkmjnew

 

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