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4年前。バンド thai kick murph から、ワジマケイが脱退した。たくさんの仲間たちの熱狂と割れんばかりの音楽と、あたたかい空気に包まれて。会場は揺れに揺れ、ボーカルのヨウちゃんは涙で歌声をにじませた。みんなが「ナンデやめるんだよバカ」と、怒ってるようにも見える、そんな光景だったように思える。

あの時 撮った映像、残ってたかな? と、思い返してみる。4年前のことだしあまり覚えていないけれど、3.11の「ゆれ」に引っ張られて、まだついこの前のようにも思えるし、よく晴れた日曜日の朝にこうして想いを馳せてると、ずっと昔の話のようにも思える。
この瞬間は、残さないと、と、体が反応して、いつのまにかケータイのカメラの、録画ボタンを押していた。そして、演奏は終わり、停止ボタンを押したまま、ワジマケイの『活動』も、止まった。じゃあもう一度『録画』を押せば、動き出すのかと言えば、動き出すかもしれないし、そうはいかないのかもしれない。

最近、彼に会うと決まってスーツで、ネクタイだけ外していろいろ『なかったこと』にしてる感じ。けれど目の奥で燃えたぎる炎。ワジマケイ。ニュートラル。というより、若年層サラリーマンモラトリアム哀歌。

PHOTO&TEXT:JUNYA KATO(PARK INC.)

 

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加藤 肩書きなんだろうね。元thai kick murph、東大OBって謎の肩書きもあるかもね。

 

ワジマ 26歳のサラリーマンですかね。ケータイゲームの開発の。

 

加藤 サラリーマン。いいね(笑) thai kick murphやめたのっていつくらい?

 

ワジマ 4年くらい前ですね。就職のちょっと前くらいに。

 

加藤 ケータイゲームの開発がしたかったの?

 

ワジマ いや、実は就職活動の時にやりたいことが何もなくて…。たまたま先輩から誘われて。家も近いからいいかなって。スマホも普及しはじめてた時なんで、面白そうかな〜くらいで。

 

加藤 軽い(笑)

 

ワジマ そもそも中学高校とずっと目標みたいなのがなかったんですよね…。

 

加藤 目標がない東大生とか、いるんだね。

 

ワジマ 長野の田舎だし、進学とかも興味なくて。いい家で育ったわけでもないし。

 

加藤 あ、聞いたことある。階段がものすごく急なんでしょう?

 

ワジマ おばあちゃんが転んで骨折するくらいの、急な階段ですね(笑)

 

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加藤 高校時代はどうだったの?

 

ワジマ 不良じゃなかったけれど、学校もサボりまくってたし、ずっと勇人くん(同級生)と「映画を撮ろう!」って言って遊んでて、脚本書くわけでもなく、夜な夜な公園に集まってイメージだけ出し合って。それがメチャクチャたのしくて。じゃあ「これを本当に作ってみよう!」って言って、日大の映画学科に行こうと思って勉強しはじめたんですよね。高3で塾行って。

 

加藤 日大、いかなかったの?

 

ワジマ 途中でそんなに映画が好きじゃないって気づいて…。なんか違うなって。映画の学校入って、映画好きじゃないのに映画の勉強するとかって、地獄だなと。だったらバンドの方がいいなって思って。で、高校でコピーバンドを組んで文化祭で発表したり。で、大学に行ったら自分のバンドやりたい!って思うようになって、早稲田の軽音を目指そうと。

 

加藤 でも、早稲田にも行かないわけで。

 

ワジマ ですね。当時ずっと片思いしてた『漬物屋の娘』が、推薦で早稲田はやく決まって、なんか急に行きたくなくなっちゃったんですよね…早稲田は。

 

加藤 なんだそれ(笑)

 

ワジマ で、今度は公園作りたいなって思うようになって。高校生の時って、夜中、公園でみんなで遊んでると、世界が自分中心にまわってる気がしてて。しかも、みんながいなくなった後の公園とか、学校とか『公』の場って、自分たちしかいなくて、なんか支配感があって。猫を拾ってきて公園でみんなで飼って育てたり。そこに身を置いた時の全能な感じがヤバかったんですよね。

 

加藤 わかるわかる。で、公園作るためにどうしたの?

 

ワジマ 慶応に環境情報学部っていうのがあって。よくわからないけど、なんとなく公園作れそうかなと。

 

加藤 作れそう作れそう(笑)

 

ワジマ で、そこを受けるには論文が必要で。論文を書く練習をはじめて。

 

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加藤 でも慶応にも行かないんだよね?

 

ワジマ 当時、東大って後期試験っていうのがあって、8教科くらい受けないと入れないところを、国語・英語・社会・論文だけで入れるっていうシステムがあって。定員は50名なんすけど。だと、慶応の環境情報学部とおんなじ科目だから「受けてみたら?」って友達に言われて。受けてみたんですよね、試しに。後期試験って、いまはもうないシステムなんですけど。馬鹿なひとも集まってきちゃうから廃止に。つまり東大のバカ枠(笑)

 

加藤 それで?

 

ワジマ …まぁ受かったら行きますよね、東大。

 

加藤 そんなノリで入れるんだね…。そりゃ廃止になるわ。

 

ワジマ でもそもそもその時、バンドやりたかったから。

 

加藤 え?公園は?

 

ワジマ その頃にはもう…。よく考えると、どれも理由はあとづけでしたね。とにかく東京の大学行って勇人くんとバンドやりたかっただけなんですよね。その理由を探してただけで…。映画からはじまって、漬け物屋の娘を好きになって、公園を作れたらいいなとか…。とにかくバンドがやりたかったですね。『自分の』バンドがやりたかった。でも大学も全然なじめなくて…。みんなずっと勉強だけしつづけて入ってきたから、解放された瞬間に躁状態になってて、その軽さに耐えれなかったんですよね…。だからバンドサークルもぜんぜん面白くなくて。ブリティッシュロック研究会って名前なのにハードコアとかで…4人しかいなかったし…。新しくメンバーの女の子が入ってきたかと思ったら「シャカラビッツみたいなのをやりたい」って言ってて…、辞めよう…と。そのかたわらで、別の大学に進んだ勇人くんはバンドサークルでメチャクチャたのしそうなんですよ。これはいよいよバンドやらないと埒があかないなぁと。楽器できなかったんですけど。

 

加藤 そこまで思ってて楽器できないんだ(笑) 逆にすごいな。

 

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ワジマ ベースやりたいって思ってたんですけど、勇人くんドラムだし、ベースとドラムだけのバンドって完全にヤバいじゃないですか…。完全に他力本願でやろうとしてた時に、隣の高校で知り合いだったようちゃんとえっちゃんのバンドがいまはやってないって言うから、「一緒にやろう」って。で、はじまったのがthai kick murphですね。念願だった『バンド』を組んで。そこで夢が叶ったって感じです。

 

加藤 でもそんなにやりたかったバンドも抜けちゃうわけだ。就職を前にして。

 

ワジマ 先のビジョンがなかったから、いざ卒業っていう時にどうしていいかわかんなかったですね。映画がだめで、公園もダメで、学校にも、バンドシーンにもなじめず。世界は自分中心でまわってない。って気づきました。

加藤 …。

 

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ワジマ これ、インタビューぼくでよかったんですか?

 

加藤 (笑)

 

ワジマ ここでインタビューされてるひとたちみんな何かしら自分のやりたいことをカタチにしてるじゃないですか。続ける強さとか。…ぼく、なにもやってないんすよね…。アクションがないんですよね。

 

加藤 ありのままでいいでしょう。よく見えるように編集するわけじゃあないから、読者に響くか響かないかはいまのワジマ次第なわけで…。

 

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ワジマ 響かないだろうなあ…なんか悔しいですね…。行動してるひとたちには敵わないですよね…。ずっと仕事をしてきたっていうより、仕事をいいわけにずっと眠ってた感じです。起きたら時代が変わってた。なんか悔しくなってきたな…。

 

加藤 ははは(笑) でも、その『何かやりたそうな感じ』を見て、声をかけたつもりだし。あとは、いまやりたいことに対してしっかり目標定めて、行動あるのみじゃない? というわけでそろそろ公園みたいなモノやコトを…。

 

ワジマ いやいや、まだまだぜんぜん話し足りないです!まとまってないですよね!

 

加藤 最悪いいかんじに書き足しておくから、だいじょうぶ。早く終わらせてゆっくり呑もうよ(笑)

 

ワジマ これからなんですよ!

 

加藤 ワジマ、RE:BORN(笑)

 

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公園みたいなモノやコト

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加藤 公園に関してはどう? 作りたいと思ったほどだから何かしらあるわけでしょう。

 

ワジマ そうですね。最初に言いましたけど、やっぱり、ああいうパブリックな場所に、仲のいい友達と集まった時の支配感ですかね。

 

加藤 そうだね、さっき言ってたね。というわけで、ワジマケイのNEUTRALでした。おつかれさまです。というわけで、呑もう(インタビュー放棄)

 

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ワジマ いやいや。なんて言うんですかね…公園についてのモノやコトじゃあないですけど、危機感は感じるんですよ。このままでいいのかっていう。なんだろうな…みんな普段、何を思ってるんだろう。ああ、なんか考えたら辛くなってきました。別に会社が辛いっていうんじゃなくて、会社員として言えば順風満帆ですよ。折り合いつけて。会社への不満もないですよ。運は良かったと思うんです。でも、2014とか、4桁の数字を見ると焦るというか、NEUTRALに出てるひとたちの動きも含め、まわりの人たちに煽られる。行動しないとって。怖いっすよ。なんで自分にはこんなに何もないんだろうって。会社がなくなったら『生きてやること』がなるんじゃないかって。だから『いま』動きたい。やらなかったら後悔するとかじゃあなくて、後悔すらできない可能性があるから。

 

加藤 刺激がほしいんじゃない? きっと。最近のワジマをみてるとそう思うよ。言葉なんかでは説明できない瞬間というか、いつの間にか、涙を流して諸手をあげて笑ってるような瞬間がほしいんだなって。そんな『血』沸き『肉』おどる瞬間が、いままでの中でバンドにしかなかったから、それをまた得たいって思ってるんじゃないかな。会社というスキームの中では得れない。

 

ワジマ そうですね…。確かに『血』沸いてませんし、『肉』おどってないですね。いまは。だから、『血』沸き『肉』おどれるように、素直でいたいです。会社がなくなったとしても立ってられるようになりたいです。何かをずっと続けていたら、身に付いたのかなって思ったり、でもそれは違うんだろうなって思ったり。だから、目の前のやりたいことには手を伸ばしたいですよね。『血』沸き『肉』おどれる度を高めていきたいです。そのためにいろいろなひとに会いに行きたいし、話を聞きたい。

 

加藤 『血』沸き『肉』おどるって言いたいだけだよね、もはや(笑) もっと単純に言うと泣いて笑って抱き合うみたいな。

 

ワジマ そう!そう!それです!それがやりたいんです!

 

加藤 ぼくもきっとそうで、だから『祭り』とか『音楽』とかに固執したい。『血』を沸かせて、『肉』を踊らせたい。いままでそんな瞬間、なかったの?

 

ワジマ やっぱバンドやってた時ですね。だから、夜中に『公園』に集まって遊んでた時みたいに、またみんなで集まってバンドをやりたいですね。

 

加藤 thai kick murphに戻れば(笑)

 

ワジマ ワジマケイ RE:BORN(笑)

 

 

 

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さよならワジマケイ 2010.05.11

原稿を書き終えた頃に、youtubeにアップしたのがあったなと思い出す。笑ってしまうくらい血が沸いて、肉が踊っているワジマケイがいる。

4年。
充分に取り返せる年月。
と、自分にも言い聞かせてみる。

 

 

 

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