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ZINE(ジン)とは …
自作の文章や絵、写真などを
コピー機やプリンターで少量印刷し
ホチキスなどでとじた小冊子
MAGAZINE(雑誌)が語源とされる。
ー コトバンク より抜粋

本屋でファッション雑誌をめくっていると
ときどき、心地のいい脱力感にみまわれる。
そのイラストのページのはしに目をやると
STOMACHACHE!(お腹がいたい!)
そんな瞬間が、年々増えて来ている。
異質・型にはまらない=オルタナティブ
東京と名古屋を拠点に活躍する姉妹
イラストレーターユニット STOMACHACHE.

PHOTO&TEXT:JUNYA KATO(PARK INC.)

 

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加藤 まず読者が気になるのは、STOMACHACHE(ストマックエイク=お腹が痛い)という不思議な姉妹ユニットの名前の由来かなと(笑)

 

のぶえ  それはよく聞かれますね。でもあまり覚えてない…。

 

ともえ なんか小学生の頃、学校通う時とか授業中にすぐにお腹が痛くなってて。最近も胃は痛いんですけど…。で、ふたりでZINEを作ろうかってなった時に、名前なににしようかって話してて、「お腹が痛くなった」(STOMACHACHE)でいいんじゃない? って。意外とすんなり決まったのは覚えてます。

 

加藤 ふたりの役割は?

 

ともえ 仕事のときの絵の役割としてはわたしが背景で、のぶえちゃんが人物ですね。

 

のぶえ  有機的担当と無機的担当。

 

ともえ がんばって人物描くときもあるんですけど、のぶえちゃんみたいな自然なやわらかいひとにならないんですよね(笑)

 

加藤 そもそもZINE を作ろうって思ったきっかけは?

 

のぶえ  最初は…ともえちゃんがまだ高校生だったから10年くらい前ですかね。レディオヘッドが日本のフェスでライブした時に、「あげよう」って思って。

 

加藤 あげよう(笑)

 

のぶえ  フェスってアーティストがうろうろしてたりするから、出待ちしてれば会えるかもしれないって思って。そういう感じでずっと遊んでましたね。ひまだったから。

 

ともえ あとはrelax(雑誌)ですかね。写真家のRyan McGinley (ライアン・マッギンレー)のインタビューで、自分で手作りで作った写真集のことを話してて。その当時、それがZINEだって知らなかったんだけど、すぐにそれがZINEだってわかって。

 

加藤 そうだよね。いまでこそZINEを作るのが普通だけど、10年前にZINEなんて感覚まだ普及してなかったからね。ましてや高校生…。

 

ともえ 友達は『ZINE』って言葉をウチらが作ったと思ってました(笑)

 

加藤 で、レディオヘッドにあげようと(笑)

 

ともえ そこからすごいペースでZINEを作るようになって。作ったZINEをTOWER RECORDSに万置きしてました。棚に勝手にZINEを置いて…。

 

加藤 万引きの逆(笑)

 

のぶえ  (店内に)コーヒーが飲めるところがあって、そこに座ってお客さんがZINEを取って行くのを見てましたね。

 

ともえ たまに店員が棚を整理しにくるんですけど、パラパラっとめくって、笑いながらまた戻してくれて。のちのち、そのタワレコで働いてたひとと会う機会があって、聞いたらウチらが万置きしてたの知ってたみたいで(笑)

 

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加藤 当時からイラスト?

 

のぶえ  そうですね。ふたりとも高校も大学も美術系だったんで好きで描いてたって感じでしたね。

 

加藤 イラストレーターになりたいって願望はあったの?

 

のぶえ  ありましたね。こどもの頃の将来の夢が「絵描きさん」で、おねえちゃんがもともと美術系の高校に通ってて、すごい楽しそうにしてて、絵を描いたりするのが好きな人だから…。

 

加藤 え、ちょっと待って2人兄妹じゃないんだ。

 

のぶえ  5人です(笑) ウチらはおねえちゃんの真似して高校、大学に行った感じです。

 

加藤 まさかその妹たちがこんなに売れっ子になるとはお姉さんも思わなかっただろうね。もう雑誌で見ない日ないもんね。大げさかもしれないけど、コンビニで雑誌を開くたびにSTOMACHACHE(笑)

 

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ともえ 一時期すごい時があって、その日、近所の本屋さんに並んでる本や雑誌で、ウチらが描かせてもらったのが11冊もあったんですよ。数えてみたら。そんなに働いてた気がしてなかったんで、まだまだ働かなきゃ!って思ってたんだけど、11冊!って(笑)

 

加藤 すごいよね。もちろんユニットでやってるっていうのもあると思うけど、なかなか11冊っていうのは…。ちなみに、そもそも2人でやろうと思った理由は?

 

ともえ 昔から親の転勤というか、転校が多くて…。小学校の頃、集団登校だったんですけど、暗かったよね、ふたり(笑) 町によってはすごく仲がいいみたいなんですけど、ウチら内気だから全然みんなと仲良くなれなくて…。待ち合わせの公園の隅っこで足で地面をぺたぺたしてました…。それで、自然とふたりが仲良くなって。

 

のぶえ  集団登校すごい憂鬱だった…。

 

加藤 ぼくも集団登校だったし、転校が多かったからわかる。放っておくとインにインに入ってくよね。それは意識しなくても姉妹の結束は強くなるよ(笑) あと、観察力もみがかれるよね。転校生の観察力をナメるなって思う時あるもん。

 

ともえ そうなんですよ、空気すごい読めます(笑) あそこの空気がちょっと変わった!とか。クラスのゴシップネタとかも、ちょっとしたことで気づくから、聞かなくても「あぁ、アレね」って。

 

加藤 そうそうそう。そういう観察力もふたりのイラストのテイストに影響してるのかなと。あとはすごく音楽的というか、音楽から影響を受けてる印象があるんだけれど。カルチャー臭が強い。

 

ともえ STOMACHACHEって男だと思ってたって言われます。

 

加藤 絵のタッチを見ればね。好きなミュージシャンとかは?

 

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ともえ 高校生の時はニルヴァーナとか。バンドでコピーとかもしてたんで。(このカーディガンも)カート(コバーン)っぽいてたまに言われます。

 

のぶえ  新しいものというより同じのを何回もずっと聞いてますね。

 

加藤 さすがオルタナ姉妹(笑)

 

ともえ あとラジオ聞きます。『安住紳一郎の日曜天国』っていう。あ、でも音楽じゃあないか…。あ、最近は友達の音楽をよく聞きますね。

 

加藤 CDジャケットとかバンドTの絵を描いたりしてるもんね。波多野くんのV/ACATIONとか(NEUTRAL #008参照) きっと音楽すきなんだろうなって。アメリカとかの。

 

のぶえ  ああアメリカの影響はありますね。ペイブメントとか。

 

加藤 帰国子女っぽい感じがあるというか。

 

のぶえ  あ、それはお父さんの影響かもしれないですね。

 

ともえ お父さんがちょっと変わってるというか、牧師をやってるんですけど、若い頃の話が面白くて…。なんか、22歳くらいでお金ためて船でシベリアに渡って、そこからシベリア鉄道でロシア横断して、ヨーロッパを2年くらい転々としてたみたいで。イギリスとかスウェーデンとかのパン屋さんで働きながら、語学の勉強して、ビザが切れたらほかの国に移ってって。で、牧師さんに出会ったらしく、影響されて日本に帰って牧師になるんですけど、のぶえちゃんが生まれてから、今度はフィンランドに2年くらい行って。また戻って来てわたしが生まれて。

 

のぶえ  フィンランドの時は物心ついてなかったけれど、日本に戻ってからも外国人がまわりにたくさんいて。

 

加藤 家が教会だったってことだ。

 

ともえ いや、家を自分で建てて、教会も建てました…

 

加藤 謎すぎる…それはいろんなところで影響されるね…。

 

のぶえ  『なんでもじぶんでつくる』っていう精神ですかね。そこからつながってる気がします。当時は普通だと思ってたんですけど、ちがってたて、じつはヘンな家で育ってた…(笑)

 

ともえ 大学くらいで気づいたよね。

 

のぶえ  ちょっと遅かったよね。

 

加藤 オルタナ姉妹の誕生秘話だ(笑)

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公園みたいなモノやコト

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加藤 ふたりの作品に、たまに公園みたいな雰囲気の作品あるよね。

 

ともえ それはきっと有機的な感じの、のぶえちゃんの絵ですね…。わたしはコンクリートとか、ビルとか、街ですね…。

 

のぶえ ふたり、わりと対照的で。ともえちゃんが3月から東京で、そっちの方が合ってると思う。

 

加藤 ともえちゃん、目覚めるかもね。地下鉄とかコンクリートとか、なじむわーって。

 

のぶえ そうそう(笑) わたしは公園でこどもを遊ばせたりしてるんで、広い公園とか、自然がたくさんある公園とかの方がなじみますね。

 

加藤 役割分担。

 

ともえ あとは、大学が公園みたいな場所でしたね。愛知県立芸術大学っていう吉村順三さんっていう建築家がつくったすごいオシャレな建物があって。山の中だったんで自然もいっぱいあって。ベンチもあって、落ち着ける場所ですね。

 

のぶえ 山の中にあってキャンプ場みたいなにおいがしてすごい落ち着くんですよ。あと、大学の裏に農業試験場という研究施設みたいなのがあって、その敷地内にすごく整備された謎の公園があって。一般には解放してない公園で、山の中入って行くといきなり視界が開けるから天国みたいな。そこ、天国って呼んでました(笑)

 

ともえ 今は立ち入り禁止になっちゃってるんですけど、当時は入れて。一回ふたりで行った時にすごい軽装の外国人がいて、「コンニチワ」って言って奥に消えってって、あれはもしかして…。

 

加藤 ついてったらアカン!みたいな(笑)

 

のぶえ そうそう(笑) ってこれ、質問の答えになってますかね…。

 

加藤 大丈夫。なんかそういう経験がふたりのインスピレーションのもとだってのは充分わかります。

 

ともえ 最近ひさしぶりに行ったんですけど、やっぱり良かったですね。いつか住みたいくらいの。

 

加藤 あれ、その大学で去年講師やってなかった?

 

ともえ 今年もやります。東京から通おうかなって。

 

加藤 なんかツイッターかなんかで見たけど、授業で生徒と洞窟に入ってたよね?

 

のぶえ ああ!ともえちゃん洞窟入ってたね(笑)

 

ともえ そうなんですよ。学校の裏に本当に洞窟があって。コウモリとかもいる。何がどうっていうわけじゃあないんだけど、みんなで入ってみようって。入ってみたら何かできるかなって。

 

加藤 今後やりたいことってある?

 

のぶえ わたしは陶芸がやりたいです。もともと大学で陶磁を専行してたんで。

 

加藤 絵じゃないんだ(笑)

 

ともえ わたしはでっかいのを作りたいですね。最近、大きな木とかで何かするのが楽しくて。あ、家を建てたいですね。家さえあればなんでもできるんで。

 

加藤 ふたりとも自由だなあ。これ、完全にお父さんの影響だよね(笑)

 

ふたり そうですね(笑)

 

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STOMACHACHE.

TOMOE MIYAZAKI & NOBUE MIYAZAKI

オルタナティブ姉妹

妹・ともえ ( 1986.7.18 ) 姉・のぶえ ( 1984.7.17 )

家を自分で建てた元牧師の父のDIY精神を受け継ぎ、

イラスト・zine・Tシャツ・木工・刺繍・映像の制作をしている。

http://stomachache.jp

 

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