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2014年。東京。世田谷。
どこかのだれかの wanna relax.
ただひたすら、なんとなく。

PHOTO&TEXT:JUNYA KATO(PARK INC.)

 

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ラップユニット WEEKEND として一緒に歩いて来た約6年間。小学校1年生だった子供なら中学生になろうとしている歳月。けれど、あらためて顔を合わせても、少し老けたなとか、少し痩せたんじゃないかって思うくらいで、本質はまったく変わらない。

2013年2月の解散ライブから約1年。ひさしぶりの再会。

泉水 政輝 の ニュートラル。

 

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加藤 泉水くんの肩書きってなんだろうね。ミュージシャン? 音楽プロデューサー? クリエイティブディレクター?

 

泉水 うーん、なんだろうね。ないっちゃないかな。例えば「雑誌を作りたい」でもいいんだけど、何かを「やりたい」って思った時にやれる状態を用意しておきたいというか。自分は◯◯だからそれはできませんってせっかくの可能性をなくしたくない。音楽もやってるけど、音楽ってあくまで1つのコンテンツって感じで、だからミュージシャンですって感じもあまりないしね。あまり音楽に頼る気もしないというか、「オレには音楽しかないんです」ってひとにはなれない。

 

加藤 おお、意外だね。もっと音楽のひとかと。

 

泉水 うん。むしろ普通に暮らす分には音楽ってそんなに重要じゃないかなって。もっと言えば『音楽』が好きな人ってそんなにいないんじゃないかって思うくらい。「オレ音楽すきなんですよ」ってヤツに限って意外と知らなかったりね(笑) 自分たちで音楽が好きだっていうのを確かめあって終わり、みたいな。

 

加藤 わかるわかる。それって音楽が好きっていうか自分が好きなだけじゃないかってひとたちね。

 

泉水 そうそう。だから『音楽が好きだ』って言ってるひとすごい大変だと思うんだよね。70分のレコードを最初から最後まで通して聞くのだって大変だし、仮にファンだったとしても、一字一句をちゃんと吸収するのってすごく重い作業だと思う。それで『音楽全部が好きだ』って言うのって無理してない? って思っちゃう。1つのアルバムの中でもあれは好きだけどこれは好きじゃないってこともあるんだし、もっと自然に楽しめばいいのにって。音楽以外のいろんなことも取り込んで、もっとふわっと感じていたいというか。そのくらいがいいよね。ラジオが好きで昔からずっと聞いてるんだけどさ、そのくらいがいい。おもしろい話があってついでに音楽があって、たまにグッとくる。

 

加藤 いい考え方だね。

 

泉水 そんな中でも作り手として思うことはある。もちろん『好きすぎる』から職人的になっていくひとたちはいて。ドラムの音1つ取ってみても、こっちの方が良いってこだわりはあるんだけど、でもそれに対して「オレ、音楽が好きだ」とか「音楽しかない」とは言えないというか。「この柱へのこだわりは…」とか言ってる大工さんより、こっそり墨つぼを屋根裏に隠すみたいな感じが好きかな。リスナーからするとどうでもいいというか。

 

加藤 泉水くんは聞き手でもあり、作り手でもあるからね。いいバランス。

 

泉水 そうだね。もちろん音楽に夢を抱いてた時期もあったし、ヒーローもいたし、もしかしたら音楽で食べていけるんじゃないかって思ったこともあった。けど今はあくまでたくさんある楽しみの中の1つ。でもずっと音楽には感謝してるから、恩返ししないとなって思っていまでも作ってるけど。

 

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加藤 ミュージシャン以外に何かになりたいって思う?

 

泉水 『ちゃんとしたひと』になりたい。

 

加藤 ちゃんとしたひと(笑)

 

泉水 どうも軽いんだよね。ひととして。長期的スパンでものごとを考えれない。日々、生きてるって感じ。ほんとその日暮らし。きっと根が明るいんだよね。イヤって思うこととかやりたくないって思うことってそんなになくて。だから、なにか頼まれて断らないでいたらここまで来たというか。やってみて考えるというか…。ラッキーなんだと思う。いや、これはマジで。運がいいひとってたくさんいると思うし、くらべるもんじゃあないけど、オレ、かなりラッキーだと思うよ。

 

加藤 肩書き『ラッキーボーイ』

 

泉水 音楽で言えばさ、会いたい人にもうひととおり会えたし。会えただけでラッキーだよね。ただのミーハーな男だからさ、会えただけで満足。話せたらもっと嬉しい。ましてや同じバンドで演奏したり海外ツアーに行ったりできるなんて思ってなかったし(※フィッシュマンズのベーシスト柏原譲氏のバンドOTOUTAにギターボーカルとして加入)

 

加藤 フィッシュマンズ好きなミュージシャンはやまほどいるけど、メンバーになれるってのはなかなか。

 

泉水 ラッキーとしか言いようがない。

 

加藤 たしかに。でもなんでなんだろうね。

 

泉水 あんまり考えてないんだけどね。ピュアって言うのとはちがうけど、営業とかじゃあなく、狙ってるわけでもなく、単純に自分が会いたいって思ってたひとが目の前にいたら話しかけちゃう。その時に自分が作ったCDを持ってたら「聞いてください」って渡しちゃうし。あなたに影響されて作りました!って言っちゃう。

 

加藤 街を歩いてた奥田民生にCD渡してたもんね(笑)

 

泉水 そうそう。あれもラッキーだよね。その瞬間瞬間はいろいろ考えてるはずなんだけど、波が来たら乗っちゃえというか。あとは身を任せるというか。

 

加藤 平成のラッキーボーイだね。

 

泉水 こんなんでいいのかな(笑)

 

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加藤 でもただラッキーなんじゃなくて、何かしら根拠があるはず。『運』って選ぶチカラだと思うんだよね。だからどこかでその能力を身につけてるはず。例えばずっと子供の時からラジオが好きって言ってたけど、それってほかのひとよりもたくさんおとなの話を聞いてきたってことだと思うし、思春期の時に読んでた雑誌や聞いてた音楽とか。

 

泉水 そうかもね。思春期は尖ってたからね(笑) いまでも1つだけ強く思ってるのは、あの時の、高校生の時の自分が『NG』って思うことはやらない。「おまえそうじゃねーだろう」って、右斜め上くらいから高校生の時の自分が見てて。そいつに説明できないことはやらない。

 

加藤 童貞のときのオレが見てる。

 

泉水 想像のおっぱいを忘れてはいけない。

 

加藤 くだらねー(笑)

 

泉水 あとはおじいちゃんの影響かな。すごい尊敬してるおじいちゃんがいるんだけど、90いくつで死んじゃうんだけどさ、死ぬ時にさ「心は19歳のままなんだけど、体が動かねえんだよ」って言っててさ。それがずっと響いてる。歳を取れば取るほど。なにも考えてないようなひとだったんだよね。根が明るいというか。文句ひとつ言わないひとで。ふつうだと揉めるようなこともひょうひょうと通り抜けて行くんだよね。それに憧れてて。その影響かな。「高校生の自分にウソをつかない」って。

 

加藤 そのときのピュアネスを信じてるってことが何かを選ぶときの基準になってるのかもな。

 

泉水 あんまり考えたことないけどね(笑) けど、たくさん扉があって、どれを開けてもいいんだけど、無視してもいいって時に、なかなか扉を開けないひとって多いなとは思うよ。度胸がないんだと思う。あけてみて「はっ!なにもない!」ってなったらもちろん怖いわけで。でも開けるようにしてる。

 

加藤 でも泉水くんって開けて、そこになにもなかったらニヤニヤしちゃうでしょう。

 

泉水 そう。とりあえず脱いでみるかって。

 

加藤 わかる(笑)

 

泉水 その空間でビビっちゃうと何もならないんじゃないかなって。だからビビらないで空間を楽しめるひとっていいと思う。楽しかったらそのまま楽しむ。イヤならイヤで出れば良い。イヤな空間ってずっといると酔っちゃうから。酔ったら出ればいい。だから本音がいいと思うよ。正直なのがいちばん。たまにセルフブランディングとかやってるひとたちいるけど、おまえが思ってるほどおまえっておもしろくないよって。そんなことやってるヒマあったら本音で歌いなよって。

 

加藤 確かにその方が運が開けそう(笑)

 

泉水 誰かが集まる空間を作れるひとってのもすごいけど。オレは『あそこに空間があるぞ』っていう係というか。空間で音楽を鳴らす担当というか。どんな空間でも楽しめるひとっていう感じ。ラッキーって『運』って思われがちだけど、『明るさ』だと思うんだよね。あっちの方が明るいからあっちに行こうってみんな思ってて。だから自分も明るくいようと。

 

加藤 いつでもなんにでもなれるようにね。その感覚って実はラッキーボーイになるためのヒントだよね。

 

泉水 そう。なにもない状態にしてる。空っぽな状態。明るい空洞ですって感じ。

 

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公園みたいなモノやコト

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泉水 仕事かなぁ。会社というか。パブリックなものって意味でね。公園ってさ、調和が必要だしさ。変なひとって公園にいれないじゃない。税金で成り立ってたりするし、経済的にもいろいろ考えさせられることがある。

 

加藤 いきなり真面目だね(笑)

 

泉水 最近お金を考えるブームで(笑) ちょっと前まではお金のこと考えたり話したりするのってちがう気がしてたけど、でも正直にいろいろ考えていったらそこだなって思ってて。だから『音楽』にも『パブリック』というか『会社』的な要素を持たせたくて。もっと広い視野で見ようぜ、というか、音楽やるなら、1つの会社つくってそれをつぶすくらいの気持ちでお金も稼がなきゃいけないんだし、「音楽が好きだ」とか「音楽がないとダメだ」じゃなくて、例えばベンチャー企業みたいに、誰が何を求めてるのかを考えて、本音でぶつかって、好きな音楽を形にしていく。

 

加藤 なるほど。それって"ちゃんと"長く音楽をやっていく考え方な気がする。

 

泉水 それでいてロマンチックじゃなきゃいけない。ホリエモンとか、孫さんみたいに馬鹿みたいな夢を持っててもいいと思う。音楽を語るうえで経済だけよそに置いておくってことはできないはずで。お金がなくて困るのもいやだから。きれいな部分もきたねぇ部分も全部出して、そこも含めて夢を見れた方がおもしろいなぁって思うんだよね。誤解なきロマンチックというか。そこではじめてリアルというか。それって会社っぽい。だからあくまで音楽は1つのコンテンツかなって。そこで問題なのは、「オレって何になればいいの」っていう…(笑) ねぇ、オレってなにやればいいのかな?

 

加藤 そんなのわかんないよ(笑) でも、音楽作ればいいんじゃないかな? 泉水くんと知り合ったのも音楽がきっかけだし、ずっと一緒にいたのも音楽だから。せっかくこうして久しぶりに会ったんだし、また一緒に音楽つくってみようよ。

 

泉水 そうだね。またなにか一緒に作ろうか。

 

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泉水政輝 / MASATERU SENSUI

 

アディダスなどの広告での楽曲制作、lyrical schoolへの楽曲提供、フィッシュマンズのゲストシンガーとして参加などミュージシャンとしての活動のほか、ART DIRECTION COMPANY『DONGURI』のクリエイティブディレクター・コピーライターとしても活躍。その活動は多岐に渡る。

 

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